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こんにちわ。トラジロウです!

前回>>第114話からの続きです。

問題の現場監督のおかげで東京西営業所に不協和音が生じ始めていました。

上田営業マンが長井所長に吉川監督の文句を言い放ちました。

すると今度は長井所長がブチ切れてしまい…

一触即発のムードになってしまいました。




老監督への不満が爆発

<長井所長>
オイッ!上田っ!
テメエ、いい加減にしろよ!
自分の好き勝手放題言ってんじゃね~ぞ!」


しかし体格に勝る上田営業マンは一寸も怯むことなく…

よりいっそう長井所長に顔を近づけて威圧してきました。

営業所員一同が、かたずを飲んで二人の様子をうかがっていました。

というか…

二人の強烈な迫力に圧倒されてしまい固まっていました。

今にも殴り合いのケンカになりそうな勢いです。

やむ負えず私は二人の間に割って入りました。


<私、>
「長井所長、上田君…
ちょっと落ち着きましょう。」


私は二人の間に入り両手で左右に引き離しました。

すると長井所長が、


<長井所長>
「オイっ、上田!
ナメたマネしやがって!
オレにこんなコトしてタダですむと思うなよ!」


変わらず黙ったまま長井所長を睨み返す上田営業マン。


こりゃマジでやべ~ぞ…


もしも傷害事件なんかに発展したら…


内心は不安いっぱいの私でしたが、

とにかくこの場を落ち着かせなくてはなりません。


<私、>
「長井所長、とにかく落ち着いてください。
実際、吉川監督はあらゆる面で全くダメです。
上田君の怒る気持ちもわかります。
われわれは歩合給が命です。
しかしどんなに私たちが努力しても吉川監督が乱してしまい…
利益率が低下して歩合給が無くなってしまう可能性が高いです。
営業マンの負荷を軽くして現場をスムーズに回すために監督制度を導入したんですよね?
しかし実際は吉川監督が台風の目となって東京西営業所は相当ヤバい状況になっています。」


すると会議ではあまり発言をしない深野係長が、


<深野係長>
「私も彼に現場を任せたらキッチン工事の日にキッチンが入ってこなくて大変でした。
結局、いろいろと余計なお金がかかって利益率が下がり…
私の歩合給は無くなってしまいました。
こういう不可効力の場合は何か配慮してもらえないんでしょうか?
そうでなければ相当きびしい話だと思います。
私も家族を抱えて生活が苦しいです…。」




その後も次々と吉川監督の不満や問題が出てきました。




わずか一か月の間でこんなに問題を起こしていたとは驚きです。

まあ、あの吉川監督なら当然といえば当然ですが…。

こうして吉川監督の話しをいろいろとしているうちに、

次第に営業所会議の雰囲気は落ち着きを取り戻していきました。

最後に老監督が残したモノ

それから約一か月ほど経過しました。

すでに吉川監督は誰からも相手にされず…

しかし会社のルール上、


一定規模のリフォームには現場監督を導入せよ


となってしまっているため、

やむおえず吉川監督を現場担当者にせざるおえませんでした。

そして彼の代わりに営業マンが必死で現場をおさめていました。

私も同じくそうしていました。なぜなら…

彼に任せておくと返って現場がオカシクなってしまうからです…。

全て私が部材などの手配をしていました。

彼には簡単な部材運びや現場の養生、掃除など…

支障がないことだけをやらせていました。

しかし現場監督が入った物件は


営業マンの本来の歩合から30%が彼に搾取


されてしまいます。

実質的に何も仕事をしていないのに…。

これは本当に理不尽な話です。

しかしどうしようもありません。

発注や現場の工程、さらには業者との現場納めの打合せなど…

本来であれば現場監督にぜひやってほしいコトを営業マンが自らやらなくてはなりません。


東京西営業所で彼は全く相手にされず空気のような存在になっていました。

それどころか、イヤミでクセのある伊沢課長は、


<伊沢課長>
「まったく役に立たね~のに何でこんなヤツが現場監督なんだよ!
俺たちの命の歩合給を削って現場を任せてるのにどういうことだよ!
ふざけんな!全く使えんジジイだっ!」


とか、


<伊沢課長>
「俺たちが苦労してるのに自分は好きな時に休みを取って…
全くいい身分だよなあ…
オレも吉川さんみたいになりて~よ!」


など、かなり厳しい暴言を直接彼に浴びせていました。

特に伊沢課長は容赦なく物申すタイプなので吉川監督も大変肩身が狭そうでした。

高齢かつ病気を抱えている吉川監督。

たまたま我が社は現場監督を一定期間内にどうしても欲しかったこともあり…

彼は運よく内定を勝ち取って入社してしまったわけです。

もし彼が我が社を退職しても再就職の道は大変険しいと想像できます。

なので、


どんなにダメでも…


どんなにさげすまれても…


彼がこの会社を自ら辞めることはないでしょう。


そんなある日、


私が夕方会社に戻ってくると…

私服姿の吉川監督が長井所長と話していました。

私と目が合うと軽く会釈をしてきました。

そしてそのまま営業所の外へ出ていきました。

この時、営業所内は私と長井所長だけになりました。

すると長井所長が、




<長井所長>
「吉川さんが今日で退職することになった。」




<私、>
「えっ?!、マジですか?
しかし急ですね?
なんで退職するんですか?
まさか転職するわけじゃないですよね?」


<長井所長>
「理由はわからん…。
自分から辞めるって言ってきたぞ。
せっかくウチに入れたのに…。
あんな感じの人を雇ってくれる会社なんてもう二度と無いだろうに…。」




私は驚きました。




まさか吉川監督が自分から辞めるとは思ってもいませんでした。


そのあと私が席に戻ると…


机の端に小さなメモが貼られていました。

トラジロウ所長代理様

お世話になりました。

いろいろ教えて頂きまして有難うございました。

お役に立てず申し訳ございませんでした。

吉川 宗徳



ヨレヨレの汚い字で…。


でも一生懸命書いたような…。


それを見た私は少し後ろめたいような…

得も言われぬ感情に包まれました。

現場監督制度が導入され一定規模以上のリフォームには強制的に吉川監督が就くことになりました。

それに伴い私の歩合給の30%が強制的に吉川監督へ…。

このことに関して私たち営業マンがかわいそうなことは事実です。

でも…

冷静に振り返ってみると、

我々はそういった目先のことだけにとらわれ過ぎていたかもしれません。

そして吉川さんを先入観だけですべて判断して何も知ろうとしなかったかもしれません。


吉川さんの人間性や本来の姿とか…


まったく彼のことに関心を持ちませんでした。


思えば彼とまともに話しもしていません。


もしかしたら…


彼はもっと我々と話しをしたかったかもしれません。


いろいろ教えてほしいと思っていたかもしれません。


今回、この汚い字で一生懸命に書かれたメモを見た私は、


もう少し彼と向き合うべきだったのではないか?


もう少し彼に関心を持ってあげるべきだったのではないか?


と考えさせられました。


もちろん仮にしっかり向き合って接したからといって、


彼が優秀監督に変貌を遂げる


といった可能性はまずあり得ないとは思いますが…。




会社内ではさまざまな利害関係があります。


いろいろな人間関係が複雑に絡み合っています。




そういったシガラミの中、

うまく人付き合いをしていくのは難しいことかもしれません。

でも、出来ることなら…


すべての人と良好な関係を築いていけたら


と私は常に思います。






みなさんはどう思われますか?






※今回でベンチャー企業奮闘記はしばらくお休みとさせていただきます。


今後は今までのエッセイをまとめた電子書籍を続々と出版して参ります。


このブログで書かれたことプラスアルファのエピソードも加えていきます。


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ぜひダウンロードしてご拝読ください!

このブログやTwitterにも告知して参ります。


今後ともよろしくお願いいたします


真山 虎次郎



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