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こんにちわ。トラジロウです!

前回>>第105話からの続きです。

私の大きな悩みだった黒沢邸裏庭の納屋の解体費用。

それを無償で請け負えば規定利益率を大幅に割ってしまいます。

そうなれば私の歩合給はゼロになります。

さらに様々なペナルティーを受けることになります。

しかし柳沼主任が私に負担をかけないようにそれを解体撤去していました。




音信不通だった柳沼主任からの電話

黒沢邸からの帰り道、

私は柳沼主任のことをいろいろと思い返していました。

私は黒沢様に今回のリフォームが


規定利益率を切っていて超特価になっている


と説明していましたが、、

実際は何とか規定利益率を確保していました。

柳沼主任はギリギリ規定利益率が確保出来ていたので私に黒沢邸を譲ってくれたんだと思います。

しかし納屋の解体撤去費用を無償で請ければ私の歩合給は無くなります。

なので彼は危険を冒してまで黒沢邸の解体撤去を自ら遂行したのでしょう。


柳沼さんってそういう人なんだよなあ。。


でも何件も不正受注してたりで裏もある人なんだよなあ。


今では全く連絡がつかない柳沼主任のことを考えていました。


そうこうしていると、

突然携帯電話が鳴りました。

なんと!、その画面には、


【柳沼主任】


と表示されていました。


えっ?!、、柳沼さん?!


私はあわてて車を停めました。

そして携帯電話を手にしました。


<私、>
「もしもし!、柳沼さん?!
どうしたんですか?
今どこにいるんですか?」


すると、ささやくような小さな声で、


<柳沼主任>
「トラちゃん!久しぶり。
あんまり長く話せないんで要点だけ言うけど、
黒沢邸の納屋の解体はオレが全部やった!
だから規定利益率は確保できると思う。」


<私、>
「そうみたいですね。
自分も積算して確認してみましたがギリギリで確保出来てました。
でもあのデカい納屋の解体を請けてたら確実に終わってましたよ!
柳沼さん、ありがとう!」


<柳沼主任>
「だよねっ!
だから納屋の解体だけはオレがやらなきゃって思っててね!
トラちゃんの営業数字に貢献したくて黒沢邸を譲ったのに、
結果、利益率が確保出来てなかったらトラちゃんに迷惑かけちゃうから。。」


<私、>
「柳沼さんとは全く連絡が通じなくなってたんで。。
もう柳沼さんと話すことは無いと思ってました。
そうやって危険を冒してまで自分のために。。
私が転職してきてから柳沼さんには本当にお世話になったと感謝してます!」


といった感じで久しぶりに、、

二度と話すことは無いと思っていた柳沼さんと話ができて、

気が付くと30分ほど話していました。

私は確信に迫った質問をしました。


<私、>
「柳沼さん。。
なぜ自分で工事を請けたんですか?
しかも何件もやってますよね?
ぶっちゃけ数件だけだったらバレなかったのかもしれないのに。。」


するとしばらく沈黙が続きましたが、、


<柳沼主任>
「まあ、、
何を言ってもオレがダメなのはわかってるけど。
でも去年離婚して、、子供4人まだ幼くて、、
養育費とかいろいろ工面しなきゃならなくて。。」


そして柳沼さんは黙り込んでしまいました。


<私、>
「自分は柳沼さんを責めたりするつもりは全くないです。
人それぞれいろいろな悩みや事情を抱えていると思います。
極論で言えば柳沼さんは誰かを傷つけたりした訳ではありません。」


ずっと電話口で黙り込む柳沼さん。。

住宅業界はドラマ人間模様



私は続けました。


<私、>
「確かに柳沼さんのやったことは悪いコトかもしれません。
でも私は会社の役員でも何でもありません。
ただの中間管理職です。
自分は柳沼さんを悪く言うつもりはありません。」


すると、


<柳沼主任>
「あっ、、ごめん。。
そろそろ電話切るね。
オレとこうやって話してるのがバレたら、、
トラちゃんまで巻き込まれちゃうから。。」


プツっ!


電話は切れてしまいました。




これが柳沼さんと話した最後でした。




余談ですが、、

今回の住宅リフォーム会社奮闘記もそうですが、、

今まで私が長きに渡り住宅業界に携わってきて、


様々な人間模様がいろいろなカタチで展開されるのを見てきました。


まさに住宅業界は、


ドラマ人間模様


だと思います。




すこし話しが反れましたが。。




いろいろな思いを胸に私は東京西営業所に戻りました。

すると長井所長が声をかけてきました。


<長井所長>
「オイッ!、トラッ!
今、少し話は出来るか?」


ということでミーティングルームに2人で入りました。


長井所長と向き合ったカタチで座った私に、


<長井所長>
「あれから柳沼と連絡はついたか?
ヤツはオマエのことを慕ってたからな!」


<私、>
「いえ。。全く連絡はありません。」


<長井所長>
「そうか。本当だな?!
ちゃんと全て報告しろよ!
柳沼と関わったらオマエも同罪になるからな!」


<私、>
「いえっ、一切連絡はありません。」


私は淡々とした口調で繰り返しました。


相変わらずイヤな言い方をするよなあ。


結局自分が損するってわかんないのかなあ。


<長井所長>
「本社で正式にヤツを懲戒免職にすることが決定した!
まあ当然のコトだがな!」




その後、柳沼主任がどうなったのかは全くわかりません。




損害賠償を柳沼主任の父親は支払ったのか?

まともに働けているのか?

4人の子供たちと会えているのか?




悪いコトをしてしまった柳沼さん。。


でも、ナゼか憎めない人でした。


今でもふと思い出してしまう時があります。


あれから15年以上経ちましたが。。




どこかで元気に暮らしていることを祈ります。




柳沼主任の章は今回で完結となります。




次回>>第107話に続きます!

※ベンチャー企業奮闘記は毎週月曜日更新です









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