こんにちわ。トラジロウです!
前回>>第104話からの続きです。
久し振りに黒沢邸を訪問した私は驚きました。
なぜなら裏庭の大きな納屋が無くなっていたからです。
黒沢様いわく柳沼主任が突然現れてこの解体処分を行ったとのことでした。
しかし私は疑問を感じていました。
なぜ柳沼さんはそこまでする必要があったんだろうか?
全く無償でこの解体処分を行ったんだろうか?
柳沼主任の深層心理
私は黒沢夫妻にたずねました。
<私、>
「黒沢様!これを全て解体撤去するのは相当大変です。
柳沼は無償でこの解体撤去を行ったのでしょうか?」
すると黒沢夫妻は下を向いたまま黙ってしまいました。
なんで黙るんだ?!
何かマズイ理由でもあるのか?
しばし沈黙が続きました。
やがて黒沢ご主人がゆっくりと話しはじめました。
<黒沢ご主人>
「実は、柳沼さんが、
自分がここへ来たことは絶対に言わないでくれって。。
この納屋の解体は柳沼さん以外の別の業者に頼んだことにしてくれって。」
しかし、、それはそうとして、
納屋の解体処分費がどうなっているのかが気になります。
<私、>
「正直なところ、
この納屋の解体処分は私にとって大きな悩みでした。
なぜなら黒沢様邸の総額500万円という金額、
これは弊社の規定利益率を確保できていないからです。
さらに納屋の解体処分も無償で請ければ弊社は事実上赤字となってしまいます。」
<黒沢ご主人>
「えっ、?!、、
そんなに安い金額になっていたんですか?
事実上の赤字になってしまうくらい。。」
<私、>
「そうです。柳沼が黒沢様に当初話していたとおり、、
黒沢様邸の見積り金額は超特価になっています。
本来ですと550万円が最低価格です。」
<黒沢ご主人>
「なるほど、、
柳沼さんは当時、超特別価格だと言ってました!
じゃあ相当無理して特別価格にしてくれてたんですね?」
<私、>
「その通りです。
規定利益率を割ってしまうと我々の命である歩合給は無くなります。
さらに会社から様々なペナルティーを食らうことになります。
ここが住宅業界の営業マンの大変ツライところです。」
黒沢夫妻はじっくりと私の話しを聞いていました。
私は続けました。
<私、>
「しかしこれは一般的にはそうだという話しです。
今回、柳沼は自分で直接この黒沢邸の工事を請けようとしていました。
その場合は会社の規定利益率も何も無い訳です。
よって歩合給のカットや罰則とかも全く関係無いですけどね。。」
こんな感じで、、
その後も私は弊社の歩合給制度の仕組みなどを話したりしました。
たとえ契約を取っても利益率が低いと接客禁止など、、
様々な罰則があることについて赤裸々に語りました。
すると徐々に場の雰囲気が明るくなり、
<黒沢ご主人>
「いやあ、、ホントに住宅系営業マンって大変ですね!
オレには絶対できないなあ。。
契約を取るだけでも大変だと思ってましたが、、
契約後もいろいろなコトを考えないといけないんですね?!」
余談ですが、、
私はこういったぶっちゃけトークが得意でした。
給料の話しや会社の仕組み、内情など。。
もちろんお客様のタイプやこういった話が響くか?
など、総合的に判断してのことではありますが。。
時にはこういったぶっちゃけトークで深く相手の心に入り込めます。
それによって得られることも多いです。
今回はまさにこれがアタリました。
黒沢様ご夫婦と私の3人はいろいろなコトを語り合いました。
しまいには去年黒沢夫妻が離婚秒読みの大ピンチだったことなど、、
そんなリフォームと関係のない家庭内の事まで深く話しました。
結局、その日は黒沢家で夕飯を御馳走になりました。
食べ終わってしばらくすると奥様がおいしいコーヒーをいれてくれました。
私は実のところコーヒーが苦手ではありましたが、、
もちろんそこは営業マンですから息を止めておいしく頂きました。
やがてご主人が少し真面目なトーンで、
<黒沢ご主人>
「柳沼さんもそうでしたが、、
トラジロウさんもお話ししていてすごく楽しいです!
なぜなんでしょうね?
何だか今日はすごく楽しいです。」
<私、>
「それは私がイイキャラをしているってことでしょうか?
いずれにしましても、、
一緒に居て楽しい人だって言われるのは営業冥利に尽きます!
ありがとうございます!」
不明瞭な解体処分費の行方
<黒沢ご主人>
「トラジロウさん!
実は柳沼さんは本当にトラジロウさんのことを心配していましてね。
というのも先ほどの利益率の話しですけど。。」
<私、>
「利益率の話し?、、といいますと?」
<黒沢ご主人>
「実は当初の柳沼さんとの約束では、、
納屋の解体処分は別途費用が発生するって言われてたんです。」
私は驚きました。
えっ?!、、そうだったんだ!
何であの時はサービスでって言ってたんだろ?!
<黒沢ご主人>
「だから柳沼さんが当初、御社に内緒で直でウチのリフォームを請ける段階では別途だったんです。」
そう言って黒沢ご主人は少し苦笑いを浮かべました。
すると今度は奥様が、
<黒沢奥様>
「ここは洗いざらい言っちゃいますけど、、
柳沼さんからトラジロウさんに担当が変わって、、
それに伴って納屋の解体処分もうまく無償でやってもらえないかって。。
旦那が欲を出したんです!」
解体処分を無償でさせようと企んでたってことか。
ようするに、柳沼さんがいなくなったからバレないと思い、、
引き継いだ私に、
「納屋の解体もサービスでやってもらうことになってます!」
とウソをついていたということです。
<黒沢ご主人>
「トラジロウさん!、、すみません。。
カケヒキしちゃいまして。。
でも柳沼さんに言われました。」
<私、>
「柳沼は何と言ったんでしょうか?!」
<黒沢ご主人>
「突然現れた柳沼さんは、
今回の金額は相当安いからこのままだとトラジロウさんがマズイことになる。
だから納屋の解体処分は自分が格安でやるから20万だけほしい。」
<私、>
「確かに普通は50万くらいかかります。
それを私が仮に無償で請けた場合、私は大変厳しい状況になるでしょう。
じゃあ柳沼は私のことを心配して自ら解体処分を引き受けたってことですか?」
<黒沢ご主人>
「実はそういうことなんです。。
本当にすみません。。
当初からこの納屋の解体処分は超特価20万で柳沼さんに別途支払うと約束してたんです。」
とうことで、、
ようやく概要が掴めました。柳沼さんは
私が納屋の解体処分を無償で請けるとクビが飛んでしまう。
ということを心配してわざわざ黒沢邸を訪問し、自ら解体処分を行ったわけです。
結局、夜10時頃まで黒沢邸で団らんをしていましたが、、
さすがに遅くなったので黒沢邸を後にしました。
帰りの車の中で私はいろいろなことを思い返していました。
柳沼さんって本当にバカだよなあ。。
会社から追われてるのに危険を犯してまでオレのことを心配して。。
もう一度、柳沼さんと話したい。。
なぜこんな事になったのか直接彼の口から話を聞きたい。。
そんなことを考えていると、、
突然携帯が鳴りました。
携帯電話の画面を見ると、
【柳沼主任】
と表示されていました。
えっ?!、、柳沼さん?!
次回>>第106話に続きます。
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