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こんにちは。トラジロウです!

前回>>第22話からの続きです。

いよいよ新人猶予期間最終月に突入し3日経過しました。


あと27日で運命が決まります。


ここを退職して新たなる会社へ転職するかどうかは残り100万円を契約出来るかにかかっています。

しかし伊沢課長のクレーム物件を引き継ぐことになり窮地に追い込まれた私。

どのくらいこのクレーム物件に足を引っ張られるのか心配です。。




伊沢課長のクレーム客宅へ初訪問

私は大手ハウスメーカー時代、現場監督や設計士として数多くの営業マンを支援してきました。

しかし営業は契約を取るためにいろいろと無理をしてしまいます。。

なのでクレームは日常茶飯事でした。。

実際に我々技術部門への引継ぎ後にクレームが勃発した場合、

設計担当の私がそのまま首になった営業の代わりに担当になるケースもありました。

そういったこともあり、私はクレーム対応のコツは熟知していました。

しかし、そうは言ってもクレーム物件なんて絶対やりたくありません。。

私は重い気持ちで伊沢課長から引き継いだ中島さんというお客さんの家を訪問しました。

玄関のインターフォンを押すと中島さんがドアを開けて出てきました。




<中島さん>
「アンタが引継ぎ担当のトラジロウさんか?
とりあえず中に入ってくれ!
いろいろ言いたいことがある。」




私は家の中に入りリビングに招かれました。

中島さんはこの家の売却が決まっていて今月中に現在購入した中古マンションへ引越す予定です。

その中古マンションのリフォームを弊社に依頼しているお客様です。

なので、早急にクレームを解決してリフォームを完了させないと住むところが無くなってしまいます。

もし間に合わなければさらにクレームの度合いは大きくなり負のスパイラルに突入することは必須です。

リビングに入り挨拶をすませたところで中島さんの誘導でソファーに着座しました。

中島さんの奥様も出てきて3人顔を合わせた状態になりました。

まず私は、


<私、>
「この度は大変ご迷惑をおかけ致しまして誠に申し訳ございません。
ワタクシ伊沢の引継ぎ担当のトラジロウと申します。
よろしくお願い致します。」


<中島さん>
「責任者の長井所長から話は聞いてるよ!
ハウスメーカーで現場監督や設計士やってたから建築に明るい人だって。
とにかく伊沢は酷いヤツだ!
契約前は調子イイことばかり言いやがって!
契約したら全然話が違うし約束も守れない!」

ハウスメーカーで培ったクレーム対応術

誠実な態度で中島さんの話しを聞きながら、私は伊沢課長との引継ぎ打合せのことを思い返していました。

伊沢課長は、この中島さんのことを


【わからずやで一方的な最悪のクレーム客】


と私に説明し、


「トラちゃんも気を付けた方がイイよ!超やばいヤツだから!」


と言っていました。

しかし私は本当にそうなのか大きな疑問を抱いていました。

私の経験上、こういったクレームに行ってお客様から話を聞くと


実際は営業マンに非があるケース


のほうが圧倒的に多いです。


契約時に説明すべきことを説明していない

約束を守らない、、

イイことばかり言ってマイナス要因は説明しない

そもそもお客様の要望を把握できていない、、


など他にもいろんな事例がありますが。。

まず私はセオリー通り親身になって中島さんの言うことに耳を傾け続けていました。

一時間ほど中島さんに共感しながら親身になって話しを聞きました。

すると案の定、伊沢課長に問題があることがわかってきました。

こういったクレーム対応のセオリーは


とにかくお客様の怒りを発散させてまずは冷静にさせること


というのがあります。

もちろん理不尽なことを言っているのであれば黙って聞いているわけにはいきませんが。。

しかし今回はおおよそ伊沢課長に非があると私は判断しました。

一切反論せず、親身になって話しを聞く私の姿に共感したのか、


<中島さん>
「、、ということでトラジロウさん。
伊沢さんがヒドイってことホントにわかってくれただろ!
まあ、、
トラジロウさんも被害者だよな!
全く悪く無いのにあんな奴のケツを拭かせられるんだから。。」


、、と思惑どおり、だいぶ私の方に傾いている様子でした。

否定せずに(理不尽な場合は別です)とにかく親身になって相手の話しを聞き続けます。

すると怒りのエネルギーが徐々に発散されて気持ちが落ち着いてきます。

その後、直接関係無いのに親身になって話しを聞いてくれている私に対して歩み寄りの気持ちが芽生えてきます。

クレームを訴えているお客様の立場からすれば


「まさか言い訳しようなんて思ってね~よな!」


と身構えているわけですから反論すれば火に油です。。

なので大抵の場合は今回のように対応すれば最低でも第一段階はクリアできます。

もう目先の契約だけに捕らわれるな!

住宅業界の営業マン(住宅・リフォーム共通)はすごく辛くて難しい業種だと言われています。

なぜなら超高額な商品でありながら


完成物を確認出来ない段階で契約をする


からです。しかも


契約者との付き合い期間が長くその信頼関係を保つのが難しい


と、すごく大変そうな仕事だということがわかります。

なので現在では住宅業界の営業マンになりたい人はかなり減っています。。

それゆえ契約時に想定していた粗利(利益)を確保できず最後は赤字になってしまう物件もあります。

契約時に申告する想定粗利よりも粗利(利益)が最終的にダウンしてしまうケースがほとんどです。


不幸にもこのクレーム物件の担当にさせられてしまった私。。


どうであろうと最終的に赤字になってしまったら大変です。

担当である以上、社内的な決済書類なども一杯書かなければなりません。


それこそ自分の契約どころではありません。。


その後もさらに2時間ほど話し合いを行い今後の対応を協議しました。

その結果、当クレームの一番の要因は、伊沢課長が


月内に契約
(営業は月単位で契約成績を評価する場合が多い)


をするため


仕様など不確定要素が多いのに無理やり契約に踏み切った


ことにありました。

要は、まだ煮詰まっていない(契約出来る段階では無い)のに無理やり契約してしまったという事です。

まあ、、

「営業マンあるある」

といった話しではありますが。。

今回、数多くの問題が出てきましたが

一番困ったのは、


現場の開け閉めは必ず担当営業マンが行う


というものでした。

通常、現場の外に暗証番号でカギを入れられる


「キーボックス」


というものを用意して、現場に出入りする職人たちはそこでカギの受け渡しをします。

しかし、今回中島さんの奥様がすごく心配症な性格のため


不特定の人が家のカギを手にするのはイヤ!


という要求を伊沢課長が飲んでしまったということです。

とにかく月内に契約を取るためにOKしてしまったんでしょうけど。。

しかし、結局伊沢課長は中島さんに内緒でカギを自身で開け閉めせずに職人に預けてしまっていました。

なので私は朝と夕方に必ずカギの開け閉めをしないといけないわけです。。

そんなの実際にありえませんし大変な労力です。。

私は中島さんにそれは物理的に不可能だと訴えました。

結果、職人ではなく私含めた弊社社員がカギを開け閉めするということで納得してもらいました。


その他にも書ききれないほどの面倒くさいコトがイッパイ。。


こんなクレーム物件を抱えながら今月達成出来るのか。。


次回>>第24話に続きます。

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