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こんにちわ。トラジロウです!

前回>>第42話からの続きです。

私も東京西営業所も今月の営業最終日を明日に控え崖っぷちな状況でした。

私自身、今月は小橋邸の200万円の契約が解約になるため来月から基本給が半額になってしまいます。

そうなったらこの会社を退職して転職活動をせざるを得ません。。

ずっと踏ん張ってきましたが私もさすがに限界です。

東京西営業所の営業数字もここ数カ月最悪な状況が続いています。

なので私が松本邸の契約を今月締結出来ないと全てが終わりです。




究極のクロージングトーク炸裂!

<松本息子>
「今月契約しなければいけないもう一つの理由とは何ですか?」


<私、>
「もし今月中に松本様邸の工事請負契約が締結出来なかった場合、
来月、私はこの会社にはいません!」




<松本息子>
えっ、、えっ~、、?!
それは、、どういうことですか?!」




あまりの唐突な私の言葉に驚きを隠せない松本息子様。

少し間をおいてから私は冷静に答えました。


<私、>
「私たち住宅業界の営業マンは高額な商品を見なし契約として締結します。
しかし完成品を確認出来ない状態での見なし契約のため契約後のクレームやトラブルが後を絶ちません。
松本様も一年以上前に引渡しを受けた今お住まいのお家で未だにあらゆる問題を抱えてらっしゃいますよね?」


<松本息子>
「確かに、その通りです。
今住んでいる私の家は未だにハウスメーカーとイヤなやり取りをしています。。
出来る事なら他のハウスメーカーで建て替えてもらいたいくらいです。
だからこそ私も今回の実家の全改装リフォームは慎重にならざる負えないんです。
住宅業界がクレーム産業の王様だというのもよくわかりました。」


<私、>
「私は工事請負契約後に一切のトラブルが無く最終的にお客様満足を獲得出来ることを第一に考えております。
そういった姿勢で臨めば必然的に営業数字も付いてきます。なので、
出来ないことは出来ないとか、、
費用がかかるところはかかるとか、、
契約にならないことを恐れず、
厳しい指摘や懸念事項などもあえてお伝えして参りました。
そういった姿勢を汲み取って頂けたために
私に工事を任せたい
とおっしゃって頂いているものと自負しております。」

真実が最強の営業トーク

<松本息子>
「おっしゃる通りです。
今回は数社見積りに来て頂きましたが、、
トラジロウさんは懸念事項を正直に、かつ丁寧に説明してくれました。
他社さんはイイことばかり言って、、逆にこちらが
本当に大丈夫なんだろうか?
と思ってしまった時もありました。
でも、、今月契約が決まらないと来月トラジロウさんが居ないっていうのは。。?」


<私、>
「そうでしたね。。大変申し訳ございません。
正直にお話しします。
私たちも、、そうは言っても営業数字といった大きな主題から目をそらすことは出来ません。
特に今月は3月で期末決算期です。
今回提示の2800万円という金額は3月中の契約が確実に見込めるであろうお客様に対して特別稟議決裁にて獲得した特別価格です。
原則として弊社は値引しないことをポリシーとしています。」


<松本息子>
「えッ、、?!
御社は値引きをしないんですか?
他社さんは最後に【特別値引】とかで値引の項目があったりしますが。。」


<私、>
「そうです。今回の2800万円は特別価格な訳ですが【値引】という文言はありません。
なぜなら相見積りを取らずに提示金額のまま契約をしてくださるお客様が弊社ではほとんどだからです。
もし【値引】をすれば、そういった大切なお客様を裏切ることになります。
それとは全く別の話しになりますが、
私の所属する東京西営業所も今期は営業数字が大変厳しいため今月未達成だと本社から大きなペナルティーが課せられます。
私も滅多に使わない稟議決裁にて松本様邸の特別価格を承認させたため今月契約を外した場合何らかのペナルティーがあるはずです。」


<松本息子>
「う~ん。。私たちとしてはトラジロウさんでないと、、
実家のリフォームがうまくいかない気がしてまして。。
トラジロウさんがそこまで真剣に腹を割って話してくれたということは、
営業所もトラジロウさんも今月中に私たちのリフォーム契約が締結出来ないと相当ヤバいってことですよね?
、トラジロウさん、、転勤になっちゃうんですか?
もしかして、、退職して転職を考えているとか?!」


<私、>
「ハッキリとこれだけはお伝えしておきたいのですが、、
今お話ししたことは今月契約を獲得するための営業トークではありません。
なので松本様ご家族にとって少しでも問題や不安があれば無理に明日契約をして頂かなくて結構です。
ただし信頼関係のもとに不確定な工事をこれから行っていくうえで
我々業者側とお客様側の間に信頼関係と互いに尊重する気持ち
が無ければ最終的に満足のできるリフォームにはなりえません。
そのため、そういった私たちの事情も正直にお伝えさせて頂きました。
もしも今月松本様邸の契約が決まれば無事にお引渡しするまで私はこの会社に留まることをお約束します。」




まあ、、これは全くの本心で言っています。


住宅業界で一定の経験を積んだ営業マンであればわかると思います。

新築でもリフォームでも1000万円を超えてくる高額の契約になれば相当の覚悟が必要です。




余談ですが、、

私は晩年、注文住宅の営業マンだったわけですが、

最後に担当したお客様は難易度激高の案件でした。

そのため会社を退職した後も引継ぎ担当者と連絡を取り現場に何度も行きました。

退職してもなお、ずっと無償でそのお客様を支えていたわけです。

何とか無事に引き渡しを完了したのは4か月後でした。

もしも私が退職後動いていなかったら、、

間違いなくそのお客様は路頭に迷っていたと思います。

どう大変だったかの詳細はここでは割愛しますが。。
(建築基準法がらみの難しい問題で一言で表現出来ないので)

とにかくあらゆる意味でメチャクチャ大変でした。。

今でもそのお客様には大変感謝されています。




、と余談はこのくらいにしておきまして。。


そこからは松本息子様と建築以外のこともいろいろと話しました。

私の大手ハウスメーカー時代の話しや松本息子様の会社での苦労話し、、

さらには脳梗塞のお父様の介護問題から妻との関係がうまくいっていないことまで。。

私としては会社内で周りに営業所員たちが居るところで話しているため相当やりにくい状況ではありましたが。。

しかし開き直って臆することなくガンガン松本息子様とあらゆることについて熱く語り合いました。

決断の時!松本邸2800万円の今月契約の行方

その後も建築の話から雑談トークに至るまで、、

一時間以上松本息子様と話しました。

お互いの信頼関係が確実なものになったと判断した私は、

再び今月中契約クロージングを試みました。


<私、>
「松本様!いかがでしょうか?
もしも明日の月末最終日に工事請負契約を交わして頂けるのであればそろそろ準備に入らなければなりません。
なので今一度ご確認させてください。
明日中に工事請負契約を交わしても大丈夫かお父様に聞いていただけないでしょうか?」




<松本息子>
「、、、、。。。。」




しばらく沈黙がありました。


実際は息子の判断で契約出来ると思うんだけど。。


オレで契約するって決めてるんなら今月中に契約してもいいはず。。


私は沈黙を続ける松本息子様の返答を待ちながらいろいろ考えていました。

今回の営業クロージングは決して無理強いをしているわけではありません。

私に多大な信頼を頂いており、実際に弊社に任せるとまで言っているわけですから明日契約しても問題無いはずです。

すると、、


<松本息子>
「実は、、父が今日から病院に入ってしまって、、
いや、、念のため検査入院みたいな形なので命に別状がある訳ではないのですが。。
なので明日工事請負契約を交わすにしても父が居ないので契約者のサインが出来ないんです。」


えッ!また入院?!


契約書にサイン出来ない?!


一瞬の光が見えたと思ったのも束の間。。


月末最終日の契約をセッティングしても肝心の契約者が病院に入院中。。


次回>>第44話に続きます。

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