こんにちわ。トラジロウです!
前回>>第43話からの続きです。
いよいよ明日は運命の月末最終日。
何とか超高額案件をあと一歩まで突き詰めたものの、、
肝心のお父様が今日から病院に入院中とのこと。
さすがに病院にまで押しかけて契約させてほしいとも言えず、、
絶望の淵に立たされた私は会社を退職し転職活動をする自分の姿が一瞬頭に浮かんでいました。
絶対絶命!お父様が病院に入院中
この時、私は電話口でいろいろなことを考えていました。
本来、今回の工事請負契約者はお父様です。
しかし、お父様が入院中で明日サイン出来ないとなった場合、
契約者をお母様にすることは可能でしょうか?
これが新築住宅購入のケースであれば住宅ローン等のからみで慎重に契約者を決定しなければなりません。
しかし今回の松本様邸のリフォームはローンを使いません。
現金で払うと言っていました。
現金払いの場合は一緒に住んでいる配偶者のお母様が契約者になっても問題無いはずです。
しかし一方で松本家はまあまあの資産家一家です。
なので例えば遺産相続時の税金を考えた場合、
おそらく通常の基礎控除だけでは賄えないはずです。
今回の2800万円の契約者を安易にお母様の名義にした場合そういったことも配慮しないと
後で大クレームに発展することも考えられます。
今回のリフォームが50万~100万程度の金額であれば
「とりあえずはお母様を契約者にして明日契約しましょう!」
と言ってもいいのかもしれませんが、、
そこが住宅業界の営業マンは難しいところなのです。
あらゆるケースを想定しなければなりません。
どうしたらよいかわからず、、
しばし戸惑っていると、、
<松本息子>
「トラジロウさん、、少し時間をくれますか?
とりあえずオヤジと連絡を取って今話したことを伝えてみます。
そのうえで明日契約が出来るのかも含めて返答します!」
<私、>
「大変お手数をおかけしますが、、
今一度お父様とお話しをしてみてください。
いつお返事を頂けますでしょうか?」
<松本息子>
「本日中にはお返事させて頂きます。
契約書作成などの準備に時間がかかると言ってましたよね?」
<私、>
「お気遣いありがとうございます。
おっしゃる通りです。
それでは本日中にお返事のほどお待ちしております。
くれぐれもよろしくお願い致します。」
ということで電話を切りました。
悲しい性?!正念場でも思い出すマドンナの後ろ姿
私が電話を切って周りを見回すと、営業所員たちが熱い視線で私を見つめていました。
私の松本邸が今月契約出来ないと東京西営業所は大変ヤバい状況になります。
なので皆さんも気が気じゃないわけです。
すると奥に座っていた長井所長が立上り、
<長井所長>
「だいぶ苦戦してたじゃね~か?!
明日の契約ホントに大丈夫だろうなあ?
もう本社にも言っちゃったからな!
トラジロウが2800万円の契約を明日決めますって。
東京西営業所が解体になったら全部お前の責任だぞ!」
くそ~、、ネギライの言葉の一つもね~のかよ!
もうこんな会社退職して転職するゾ!
相変わらずのパワハラ長井所長の心無い言葉にムカつきながら、、
しかし冷静にならなければなりません。。
ここ3週間あまり、もうやることはやり尽くしました。
あとは本日中の松本様からの返答を待つしかありません。
契約が決まらないと契約書作成依頼も出来ずこれ以上やることがありません。
かといってこの状況で松本邸以外のことは何もする気になれません。
とりあえず私は営業所の外に出ました。
ふと携帯を見ると孫娘から着信が入っていました。
いい加減に孫娘に何かご馳走しないとなあ。。
結局この会社辞めて転職することになったら気まずいよなあ。。
などと考えながら孫娘に折り返しました。
3コールほどで孫娘が出ました。
<孫娘>
「もしもし、トラさん!
ぜんぜん連絡くれないですね?
相変わらず苦戦してるんですか?
いろいろ話したいこともあるけど、、
でも、今はトラさん大事な時期だってわかってるし。。」
<私、>
「ああっ、、優香さん。。
本当に申し訳ありません。。
ここ3週間ばかり特に激務でして。。
明日の月末最終日に2800万円の契約が決まらなかったら、、」
この時私は後に続く
こんな会社退職して転職しようかと、、
というセリフをグッと飲み込みました。
2か月前、新人猶予期間最終月間の時に孫娘は私の分身のように頑張ってくれました。
そのおかげで今の私がここに居るわけです。
そんな彼女に、
「退職したい、、もう転職したい。」
などと弱音を吐くのは失礼だし、男としてもすごく恰好悪いわけです。。
しかし私は先ほどの孫娘の言葉を思い出していました。
いろいろ話したいって言ってたけど何なんだろう。。
<私、>
「そういえば、、さっき言ってた
いろいろ話したいことって何ですか?」
<孫娘>
「あっ、、別にいいんです。。
とにかくトラさんっ!
今は余計なこと考えずに早く足元を安定させてください。。
そうしたらまた一緒に飲みましょっ!」
、といったやりとりがありました。
かれこれ2か月近く孫娘とは会っていません。。
しかし不謹慎ながら、、
街を歩いていても、、
コンビニで買い物をしていても、、
つい先日もスラっとした髪の長い女性の後ろ姿が孫娘に似ていたため、
違うと分かっていながらも早歩きで追い越したあと、
何気なく振り返ってその女性の顔を凝視してしまった私。。
最近こんなことがチョクチョクあります。。
退職して転職するかもしれない重大な時期にもかかわらず。。
男って、、こんなにも女にウツツを抜かしてしまうものなのでしょうか。。
ここ最近、会ってはいなくても孫娘のことを思い出さない日はありませんでした。。
折り返し電話の行方!松本様の決断!
この日の営業所は所員全員そろっていましたが誰一人喋らず重苦しい雰囲気でした。
無理もありません。。
明日私が松本邸の契約を外せば東京西営業所は崩壊なわけですから。。
現状で松本邸の月内契約が厳しいことは所員もわかっていました。
なので松本様からの折り返し電話を皆が固唾を飲んで待ちわびていました。
20:00を過ぎた時、突然営業所の電話が鳴りました。
すかさず電話を取った私は、
<私、>
「お電話ありがとうございます。
新光クリエイト株式会社、東京西営業所です!」
<松本息子>
「松本と申します。
トラジロウさんはいらっしゃいますか?」
<私、>
「トラジロウです!
松本様、お電話ありがとうございます。
いかがでしたでしょうか?」
その瞬間、、営業所の所員全員の刺すような視線を感じました。
すごいプレッシャーです。。
すると、、
<松本息子>
「トラジロウさんがおっしゃっていたことは全て伝えました。
3月中契約を前提に稟議決裁を通して特別価格にしてくれたこと。
オヤジが突然救急車で運ばれたのに資料や修正見積りなどしっかりと準備してくれていたこと。
オヤジも喜んでました。」
<私、>
「そうですか。。
お父様にも喜んでいただけて、、
何よりもちゃんと息子様とお話しすることが出来たことが嬉しいです。
いかがでしたでしょうか?」
<松本息子>
「大変申し訳ありません。。
結論から言うと、明日の工事請負契約締結は厳しいです。
オヤジが明日は一日病院から出られません。
一日中検査なのですが、麻酔法で胃カメラを入れたりします。
そのため体を起こして話を聞いて契約書にサインをする行為は全く出来ません。」
、、マジかよ。。これで全て終わったな。。
その時の失望感は今でもはっきりと覚えています。
しばらく、、たぶん30秒くらい?
茫然としていて何も聞こえていませんでした。
東京西営業所の所員たちも私の反応で全てを悟り、
頭を抱えてしまった所員も見受けられました。
しばらくして、ようやく我に返った私は、
<私、>
「そうでしたか。。
それではどうしようもありません。。
う~ん、、何と申しましょうか。。」
<松本息子>
「これだけいろいろと頑張って頂いて。。
本当に申し訳ありません。。
私はトラジロウさんのことを本当に信頼しています。
オヤジもトラジロウさんにお任せするつもりでいます。
そんなに今月中に契約完了しないとダメなんでしょうか?」
どうすることも出来ず返答につまる私。。
その時、
私の真後ろにピッタリ張り付いて電話口から漏れる松本息子様の声をジッと聞いていた深野係長が、
<深野係長>
「トラちゃん、
とりあえずオレに電話かわってもらえる?」
いつも温厚な深野係長が鋭い表情で電話をかわるように迫ってきました。
深野係長は電話で何を語るのか?
東京西営業所と私の運命は?
次回>>第45話に続きます。
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