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こんにちわ。トラジロウです!

前回>>第65話からの続きです。

義理人情に厚く男気のある中山社長。

絶対に無理だと思っていた7月末の引渡しを間に合わせると言ってきました。

しかし息子の中山君は、

「何を考えてんだ?!絶対無理だろ?!」

と不思議そうに首をかしげていました。

しかし我々としては手を出し尽くしました。

もう中山社長を信じるしかありません。




最後の現場打合せ

ということで翌日の夕方に松本邸での着工前最終現場打合せが開催されました。

心配して中山君も会社を抜けて来てくれることになりました。

松本邸の近くのコインパーキングで合流すると、


<中山>
「会社抜け出すの大変だったぞ!
しかしオヤジ、、ホントに大丈夫なんだろうか?
オレは絶対7月末の引き渡しは無理だと思う。」


<私、>
「また来てもらうことになって申し訳ない。。
しかも勤務中に会社を抜けて、、
ホントにありがとう。」


<中山>
「、、まあ、、別にいいけどよ!
日建学院(一級建築士資格学校)の唯一の友達だしな!
オヤジもそうだろうけど、、
請けた仕事はキッチリとやり切りたい
ってことなんだと思う。
オヤジもオレもそこは同じ考えだ!」


<私、>
「もう今日が最後の着工前現場打合せになるわけだけど。。
お父さん今回の現場に入る大工さんを連れてくるって言ってたけど。」


<中山>
「そこがわかんね~んだよなあ。。
オヤジだって今は住友不動産の【新築そっくりさん】の仕事がイッパイだから。。
段取りやら監督やらでメチャ忙しいし、、
いったい誰に頼んだんだろ?」


そうこうしているうちに松本邸に到着しました。

松本息子様に本日の流れを説明していると、、


<中山社長>
「お待たせしました!
中山工務店です。
よろしくお願い致します。」


、と中山社長が到着しました。


すると松本息子様が、


<松本息子>
「ああ、、こんにちわ。
担当してくれる工務店さんですね?
よろしくお願いします。
トラジロウさんから聞いているかと思いますが、
父の体調の関係もあって7月末に引き渡してもらえないと大変なことになってしまいます。
なのでくれぐれもよろしくお願いします!」


中山社長は松本息子様のスガルような熱い視線を受けながら、


<中山社長>
「ハイッ!
トラジロウさんから聞いております。
お任せください!
我が中山工務店は請けた仕事は必ず全う致します!
なので7月末引渡しに間に合うように段取り致します。」


それをジッと見ていた中山君は私の耳元で、


<中山>
「オヤジその場の雰囲気であんなこと言っちゃてるけど。。
大丈夫かなあ、、スゲー心配になってきた。。」


と小さな声で不安な思いを呟きました。

現場を担当する大工は?

中山君の勤めるゼネコン所属の解体屋の社長も再度来てくれていました。

そして大工の親方の源さんもまた来てくれました。


<中山社長>
「源さんも大東工業(解体業者)さんも何度もすみません。
本日もよろしくお願いしますね!」


大工の源さんと中山社長は昔からの付き合いらしく親しそうな感じでした。

大東工業社長とも何度か仕事をしたことがある様子でした。

そんなシーンを横目に私はあることに気付きました。


あれっ?!大工が源さんしかいないけど。。


息子の一郎さんと次郎さんは入れないわけだし。。


大きな不安に包まれました。

本来であれば、


「あれっ?大工が源さんしか来てないですけど?」


と尋ねてみたいところですが、

同じ空間に松本息子様がいるため聞くことが出来ませんでした。

もしもそんな質問をすれば、、

ただでさえ不安で一杯な松本息子様をさらに追い込んでしまいます。

そうして何か大きなクレームが勃発したら大変です。

私は質問したい気持ちをグッと押さえていました。


しばらくすると松本息子様が、


<松本息子>
「それではそろそろ自分の家の方に戻りますので、
あとはよろしくお願いします。」


といって我々の前から離れていきました。

私はさっそく先の質問をしようとすると、

突然中山君が口火をきりました。


<中山>
「オイっ!オヤジッ!
お客さんがいたから突っ込めなかったけど、
大工が源さんしか来てね~じゃんか!
あと誰が入るんだよ!
3人くらいでやらなきゃ絶対間に合わね~だろ?!」


、と私のしたかった質問を先に切り出しました。


中山社長は黙ってジッと我々を見つめてきました。


そしてゆっくり微笑みながら、


<中山社長>
「この現場はオレが入る!
あとは一郎だけ横浜の現場から引っ張ってくる。
だから源さんとオレと一郎の三人だ!」




私も中山君も解体屋の社長もみんなビックリしました。




<中山>
「おいおいっ!オヤジ大丈夫なのかよ?
大工としてメインで現場に入るなんて何年もやってね~だろ!
しかも住友不動産の【新築そっくりさん】の仕事だってあるだろ!
いったい何考えてんだよ!」


たしかに中山社長は元大工ではありますが、、

今は中山工務店の経営者であり大工として現場に入ったりは無いわけです。

現場で一部作業を手伝ったりなど少しは大工仕事をすることもあるようですが。。

しかも当時は住友不動産の【新築そっくりさん】の全面リフォーム工事を一括で請けていました。

なので松本邸の仕事を平行して請けた上にメイン大工として現場に入るのは無理です。

工務店経営者とメイン大工との両立は可能か?

中山君の言葉に中山社長は静かに答えました。


<中山社長>
「太一!(中山君の名前です)
大丈夫だ!
オマエはゼネコンの仕事で忙しいから知らないかもしれない。
しかし今は大工の数も減ってきてイチイチ仕事を振ることが出来ない。
だから最近はオレが大工工事を結構やってるんだ!
この間は源さんの現場で和室から洋室変更工事は全てオレが一人でやった。
まだまだオレはやれるぞ!」


<中山>
「ホントかよ?オヤジ現場で実際に大工作業やってたんだ!
源さん!ホントですか?
オヤジが大工してる姿って子供の頃しか見てないから。。」


<大工の源さん>
「オウッ!太一ッ!!
オヤジさんを嘗めちゃいかんよ!
まだまだ若いモンには負けてねーよ!
実際に現役時代と遜色ね~から安心しろ!」


大工の源さんからのお墨付きをもらい少しホッとした中山君は、


<中山>
「オヤジ、、ごめん。。
わかったよ、ほんと頼んだぞ!
でも住友不動産の【新築そっくりさん】は大丈夫か?」


<中山社長>
「実はしばらく仕事を請けるのは止めさせてもらった。
ここ3物件ほど金額が合わなかった。
最後の物件は実質赤字になってしまった。
いくら仕事を貰う立場であっても採算が合わなければ請けてもしょうがない。」


<中山>
「そうか。。たしかに最近厳しいって言ってたよな。
わかったよ。
オヤジ、ありがとう。
でもここまでオヤジが親身になって協力してくれてうれいしよ。」


ということで何とか7月末の引渡しに向けて体制は整いました。


次回>>第67話に続きます。

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