こんにちわ。トラジロウです!
前回>>第73話からの続きです。
マンション改装工事を大至急やりたいというお客様と打ち合わせをしました。
母と娘の二人で住む予定の中古マンションのリフォームです。
でもこの二人、、
すごく悲壮感が漂っていて出来れば関わりたくありません。。
母は少しウツっぽい感じだし娘は一言もしゃべらず。。
しかし何となくヤバそうだからといった安易な理由で断るわけにはいきません。
現居住アパートの退去期限に間に合うのか?
さらに厳しいことに、、
今回のマンションは管理規約がすごく厳しい物件でした。
工事申請書を提出する前に周囲の8世帯すべてを訪問して事前の工事説明を行わなければなりません。
その場合、お客様と工事業者が必ず同行の上行います。
極めつけは規定書類に署名と捺印まで取得しなければならないということです。
こんな厳しい管理規約って聞いたことないぞ。。
ヤッパこれって完全なハズレ案件だよなあ。。
一応補足しておきますと、、
近隣承諾の取得が工事着工の条件になっているマンションは確かにあります。
しかし中には海外に出張していたりなど様々な事情で物理的に一定期間での取得が不可能な場合もあるわけです。
その場合は当然、緩和措置があります。
例えば訪問してダメだった日時を記載すればよいなどです。
(もちろん複数回訪問した履歴を記載)
しかし今回のマンションは
例外なく全世帯の取得が必須
というのがあり得ない訳です。
私は改めて岩柳さんにマンションの管理規約が厳しすぎる旨を伝え、
<私、>
「8世帯全てから署名捺印を取得しないと工事申請書すら出せないルールになっています。
なので8月中の引っ越しは相当厳しいと思います。
さらに工事申請書を出してから理事長の承認まで最低2週間以上はかかると思いますので。」
すると岩柳さんは無表情な面持ちで静かに話し始めました。
<岩柳さん>
「そんな話はサンザン他の業者からも聞かされました。。
でも、、8月で今借りているアパートを退去しないとダメなんです。
他に頼るところもないから。。
ここに引っ越してこれなかったら。。」
と言ったあと、一点を見つめたまま黙り込んでしまいました。
う~ん。。マジでもう帰りたい。。
これ以上関わりたくないんだけど。。
終始言葉を発しない不思議な娘
その後、間取りの採寸や写真撮影など、、
現地調査を行いました。
そして細かい要望などもヒアリングしました。
そうこうしているうちに約2時間が経過しました。
岩柳さんの娘さんもすごく変わっています。
高校一年生だと母親の岩柳さんは言っていましたが、、
中学生にも見える幼い感じ。。
とにかく一言もしゃべりません。
もしかしたら少し何らかの障害があるのでは?
と思ってしまうほど不思議な娘でした。
ただ終始何かを訴えかけるような眼差しで私をずっと見ていたのがすごく印象に残りました。
岩柳さんの要望は水廻りと内装を全てやりかえるリフォームでした。
なので、合計金額は300から400万円くらいかかります。
<私、>
「改めてお見積書を作成しますのであくまでも参考ですが。。
ご要望のとおりリフォームを行いますと300~400万円くらいになるかと思います。」
<岩柳さん>
「今までの業者の金額もだいたい300~400万円くらいの感じです。
相場がそのくらいってことですよね?」
<私、>
「ええ。確かにその通りです。
それでは皆さんだいたい同じような価格帯になっているんですね?
何社くらいお見積りを依頼されたんでしょうか?」
<岩柳さん>
「そうねえ。。
トラジロウさんの会社を入れて5社かな?
まあ、、もうこれ以上は依頼してないですけどね。
オタクが最後です。」
ということで現地調査は完了しました。
帰りがけの玄関越しに、
<私、>
「一応お話ししておきますが。。
ちょっと工期的に厳しいので弊社の業者や職人などの日程確認もさせて頂きます。
もし弊社で8月の引渡しが不可能と判断した場合は工事をお受けできない場合もございます。」
すると岩柳さんはいつもの無表情な面持ちのまま、、
しかし口元だけは微かに笑ったような、、
何とも言えない不気味な雰囲気のまま黙って佇んでいました。
そのイヤな雰囲気を払拭するように、
<私、>
「本日はありがとうございました。
またご連絡致します!
それでは失礼致します。」
そう言い放ち私は岩柳さん宅を後にしました。
その時、チラッと、、
娘さんの顔が私の視界に入りました。
すごく寂しそうな、、
そして何かを訴えかけてくるような、、
何と表現したらよいのかわかりませんが。。
その時の悲壮感満載の娘の顔がずっと脳裏に焼き付いていました。
子供は親を選べないしなあ。。
あの子、大丈夫かなあ。。
しかし私は8月の引渡しが現実的に厳しいことと、、
岩柳さんと今後やり取りをしていくことに不安を感じたため、
契約をするのは避けようと思っていました。
悲壮感漂う母親から衝撃の電話
翌日、東京西営業所会議が行われました。
住宅業界の営業マンは一週間に一回程度の営業会議があります。
今月の契約数字の確認などがメインの主題ですが。。
私の今月の営業数字が既に目標を達成しているため余裕に構えていました。
すると長井所長が、
<長井所長>
「オマエ、今月まさか終わりとか言わね~よなあ?
自分は達成してるから後は知らね~とか。。
そういうフザケタこと考えてね~よなあ?」
、と私を煽ってきました。
最近は以前に比べてかなり落ち着いてはいましたが、
今日は機嫌が悪いのか?
やはり私のことをターゲットにしたいのか?
そして私の顧客リストを見始めました。
そして、、
<長井所長>
「オイっ!、トラッ!
岩柳邸ってなんだ?
これってマンション改装工事ですぐやりたいって客だろ!
この案件はどうなんだ!
言ってみろっ!」
うわっ、、面倒くせ~!
<私、>
「すみません。。
岩柳邸ですが、、
現地調査には行ってきたのですが、
8月末に引っ越したいとのことですが管理組合の規約がすごく厳しく、、
さらにお客様自体もちょっと問題が。。。」
<長井所長>
「問題?!、、問題ってなんだ?
カネが無いのか?
ヤクザとかそういうことか?」
ということで、、
私は岩柳さんが少しウツっぽいことや工事期間が足りないことなどの詳細を話して事なきを得ました。
ヤバい案件を無理して契約して大問題に発展した場合は営業所としても困ります。
私の説明を聞いた長井所長は、そのあと私を煽るのをやめました。
岩柳邸の資料は引出にしまったままの状態でした。
数日後、私は3ヵ月に一回の全体会議に出席するため、
現場から直接車で本社に向かっていました。
すると助手席に置いていた携帯電話が鳴りました。
誰だろう。。
見慣れない携帯電話番号が画面に表示されていました。
会社関連やお客様に関しては全て登録しているため番号だけ出るのは珍しいことです。
とりあえず運転中ということと全体会議開始の時間が迫っていたこともあり、
そのままにしておきました。
しかしその後も、、
またその後も、、
何回も数分おきに同じ番号からかかってきました。
やむおえず私は車を側道に停めて電話に出ました。
<私、>
「もしもし!トラジロウです。
どちらさまでしょうか?」
しばらく沈黙がありました。
、と、突然低くドスの効いた声で、
「見積りはまだ?」
一瞬で私は体中の血の気が引きました。
うっ、、ヤバい、岩柳さんだ!
<私、>
「あっ、?!、岩柳さんですね?
お世話になります。。
実は、、会社内でも話をしまして。。
ちょっと弊社では対応不可ということになりまして。。
申し訳ありませんが他社様で出来るところにお願いして頂けますか?」
しかし返答はありません。。
不気味なほど気配がしない状態が10秒ほど続いたと思います。
しばらくして、、
<岩柳さん>
「私たち引っ越せないと住むとこ無くなっちゃうのよ!
あんた!やってよ!
ちゃんと終わらしてよ!」
異様な雰囲気にのまれた私は相当動揺していました。
電話口から伝わってくる切羽詰まったオーラは尋常ではありません。
ちょっと、、マジでヤバいぞ!
この人ヤッパ病気だろ!
<私、>
「岩柳さん、、ちょっと落ち着いてください。。
工事を全う出来る可能性が無い場合は工事を請けられないんです!」
再び無言状態が続きました。
そして、、
<岩柳さん>
「あんた。。逃げるの?
アタシたちの家、、ちゃんとやってよ!
こっ、殺す。。殺すわよ!」
えっ?!、こっ、殺す、、殺すって。。?!
次回>>第75話に続きます。
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