こんにちわ。トラジロウです!
前回>>第74話からの続きです。
母と娘で住む予定の中古マンションリフォームの依頼を受けました。
しかしその母親がかなり情緒不安定なことや、、
マンション管理規約が異常に厳しく8月の引渡しがほぼ不可能だったり、
なので私は工事を受けられないと判断しました。
そして数日間その案件を放置していました。
するとその母親から私の携帯に電話がかかってきました。
豹変した母親からの脅迫めいた電話
<岩柳さん>
「見積りはまだ?」
低くドスの効いた声を聞いた私は、
一瞬で体中の血の気が引きました。
うっ、、ヤバイ、岩柳さんだ!
その後、何とか落ち着きを取り戻した私は岩柳さんに必死で弁明しました。
今回のケースでは総合的に判断して8月の引き渡しが厳しいこと。
なので弊社では工事を請けられないこと。
しかし岩柳さんは全く聞く耳を持たず。。
そして、
<岩柳さん>
「あんた。。逃げるの?
アタシたちの家、、ちゃんとやってよ!
こっ、殺す。。殺すわよ!
逃げたらアンタ!殺すよ!」
こっ、殺す?!、マジでヤベ~この人。。
こういったケースは初めてです。
私が大手ハウスメーカーの現場監督時代、
道路を通行止めにしてクレーンを設置しての工事中に、
回り道させられるのに腹を立てた心無い人から、
「通行止めにしてんじゃね~よ!
オマエらの道じゃね~んだぞ!わかってんのか?
テメエ!殺すぞ!このヤロー!」
など、、
それなりに暴言を浴びてきた私ではありますが。。
(ガードマンの態度が悪くて責任者の私に怒りが炸裂することも(^^;))
しかし今回のケースは内臓に鈍痛が走るような、、
何とも精神的にすごくイヤ~な気持ちになりました。
とにかく逃げ出したい気持ちで頭の中がイッパイになりました。
その後、すこし冷静に戻った岩柳さんは、、
今度は悟すように私にゆっくりと話をしてきました。
<岩柳さん>
「何でアンタの会社で出来ないんだったらすぐに言わなかったのよ?
私たち、、とにかく時間が無いって言ったでしょ?
放置して逃げようとしたんでしょ?」
この時、私は少しばかりの後ろめたさを感じていました。
どうであろうと現実的に工事が厳しいと判断したのであれば、
「すみませんが弊社では工事を請けられません。」
、とその時にキッチリと伝えるべきでした。
あの時、大変動揺していた私の頭の中は真っ白でした。
とにかくこのお客さんとはやりたくない!
私はこの母と娘から逃げ出したい気持ちでいっぱいでした。
その結果、数日間が経過してしまい、、
さらに状況は厳しくなってしまいました。
しかしここまできたらジタバタしても何も始まりません。
私は覚悟を決めました。
そして岩柳さんに話しました。
<私、>
「岩柳さん!
一つだけハッキリ言わせてもらいます。
もう二度と
「殺すっ!」
というような乱暴な言葉は使わないようにしてください。
いかなる理由があっても娘さんもいる母親としてそれは許されません。
逆にそれだけで弊社が岩柳さんを断る正当な理由になります。
今後冷静に話しが出来るのであれば私は岩柳さんとの打合せを続けます。」
すると数秒間経過したあと、
<岩柳さん>
「、、すみません。。
私、、本当に今、、精神的に余裕が無くて。。
そこは気を付けます。
、、すみません。。。」
私が打合せを続けるといったことにホッとしたのか?
私に悟されて少し冷静さを取り戻したのか?
ハッキリとした理由はわかりませんが。。
その後は普通に会話が出来るようになりました。
ブッチャケて言うと、、
この母親から無理やり逃げたとしても、
もし自殺でもされたら後味が悪いので、、
「こうなったらやるしかね~か!」
というのが私の本当の気持ちでした。
あと、終始無言の娘さんのことも何となく心配になっていました。
これだけ感情の起伏が激しい母親と二人きりなわけです。
もし私が見放したら腹いせに暴力を振るわれる可能性だってあります。
そんなことも考えるとなおさらホオッておけません。
私に何かを訴えかけるような、、
あの悲し気な娘の眼差しも私の記憶に深く刻まれていました。
ということで、、
早速、その日の夜8時に岩柳さん宅を訪れました。
なぜ遅くなったかというと、、
もう時間が無いので夕方3時間位かけて見積りと仕様書を作成したからです。
現場である光栄マンションの604号室の前に到着した私は、
ピンポーン!
とインターフォンを鳴らしました。
するとスグに玄関が開いて岩柳さんが出て来ました。
中に入ってリビングの床にベタ座りして打合せをしました。
娘も岩柳さんの横に静かに座っていましたが、、
相変わらず一言もしゃべりません。
軽く会釈程度の首の動きはあったものの、、
その時、私は娘の首周りをみて驚きました。
なんだ?!首筋にミミズばれとアザみたいのがあるけど。。
これって、まさかっ?、
しかし岩柳さんに、
「娘さんに暴力を振るったんですか?」
などと直接聞けるわけもなく。。
もしかしたら学校でイジメにあっていてクビ周りを引っ張られたのかもしれません。
結局理由はわかりませんでしたが、
とにかく娘さんのことが気になってしまいました。
私に工事を依頼したかった本当の理由
私は打合せを始める前に岩柳さんに言いました。
<私、>
「まず初めに言っておきますが、、
絶対に今後は暴力的な言葉を使わず冷静に話をするという約束をしてください。
もし先ほどのような暴言が岩柳さんから言われた場合、
弊社との打合せはその場で終了となります。」
すると岩柳さんは一点を見つめたまま無表情な面持ちで、
<岩柳さん>
「本当にすみません。。
他に依頼していたリフォーム会社も対応が悪かったり、、
結局、最後に来てくれたトラジロウさんが一番良かったんです。
ちなみに見積り金額はいくらですか?」
私は見積りを見せながら工事範囲や詳細金額の説明・工程確認を行いました。
そして、
<私、>
「ということで、
お見積り金額は税込で364万円です。」
<岩柳さん>
「大丈夫です。
それでお願いします。」
と迷うことなく即答してきました。
内心ちょっとビックリした私ですが、
<私、>
「わかりました。
しかし、何度も言いますが、、
8月末の引渡しを現段階でお約束することは出来ません。
問題の工事承諾書8世帯の取得が7月末までに獲得出来なければ無理です。」
<岩柳さん>
「わかりました。
とにかく工事承諾書の取得は私も極力頑張ります。」
その後も工事申請書や工事承諾書その他書類関係を確認しました。
そして工事請負契約日を翌日に設定してその日の打合せを終えました。
この時の岩柳さんは終始落ち着いていて、
「殺すわよ!」
、と、数時間前に私を脅迫した同一人物とは思えないほど穏やかでした。
完全にうつ病のような感じの人なので私も警戒心はあります。
しかし人間フタを開ければ何かしらの問題を抱えている訳です。
とりあえずこの母と娘のためにやるだけやってみるしかありません。
書類関係をカバンにしまって立上り、
帰るために玄関に向かって歩き出した瞬間、、
<岩柳さん>
「トラジロウさん。。
今回、5社以上のリフォーム会社に声をかけたんですけど、、
正直、、私がこんな情緒不安定だし、、
娘も何もしゃべらない無感情な変った子なので、、
怪しい親子だと思ってまともに対応してもらっていないのかもしれませんが。。
どの会社も安心してリフォームを任せられそうな気がしなかったんです。」
<私、>
「それだけ相見積もりを取っていて、、
なぜ弊社が良いと思ったんでしょうか?」
<岩柳さん>
「もちろん私はトラジロウさんが一番親切で丁寧だったんで、、
最初から良かったんですけど。。
だけど、、一番の理由は、
普段は全く自分の意見とか言わない無口な娘が、
トラジロウさんがいいって。。」
<私、>
「えっ?!、娘さんが私を推してくれたってことですか?」
すぐに私は娘さんの顔をみました。
するといつもと変わらない、
何かを訴えかけるような悲し気な眼差し
は相変わらずではありましたが、、
でもその時は、、少しだけ穏やかな、、
何となく微かに嬉しそうな雰囲気をかもし出していました。
オレがいいって言葉で言ったんだろうか?
それとも何らかの態度で示したんだろうか?
頭の中でいろいろと考えてしまいましたが、、
もちろんそこは平静を装って、、
<私、>
「そうだったんですね。。
いつも大人しい娘さんなのでそんな風に思って頂いていたと聞いて嬉しいです。
とにかく前向きにプラス思考でいきましょう!」
という感じでこの日の打合せは終了しました。
いよいよ明日は工事請負契約です。
しかし、、ある意味、
私はこの母親に完全にロックされたわけです。
もう逃げられません。。
次回>>第76話に続きます。
※ベンチャー企業奮闘記は毎週月曜日更新です!