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こんにちわ。トラジロウです!

前回>>第75話からの続きです。

感情の起伏が激しい岩柳さんの工事を請けることになりました。

彼女はかなり精神的に不安定なので正直やりたくありませんでした。

さらに工事を開始するまでの申請や承諾書など、、

あらゆる障壁が私の前に立ちはだかっていました。

しかし、もう私がやるしかないと覚悟を決めました。




8月末に引越しするための厳しい日程

翌日、予定通り岩柳さんと工事請負契約を交わしました。


これで本当にもう逃げられね~よなあ。。


心の中でそうつぶやいた私は、、

胃のあたりに得も言われぬ鈍痛を感じていました。

しかしこうなったら前に進むしかありません。


<私、>
「岩柳さん!
とにかく前後左右ナナメ合計8世帯の工事承諾書を取得しましょう!
これを取得しないと次のステップである工事申請書が出せません。」


ここで復習しますと、、

マンションの工事は一戸建ての工事よりも難易度が高いです。

その理由は共同住宅なので管理組合の規約や近隣配慮など、、

リフォーム業者の負担が一戸建てよりも大きいわけです。

そのため諸経費もマンションの方が一戸建てより高くしている業者もあります。

今回の岩柳さんのマンションはメチャクチャ難易度が高いです。

マンションの管理組合に工事申請書を提出して認可されると工事を始められるわけですが。。

今回はその工事申請書を提出する前に、


隣接住戸8世帯全てから署名・捺印を取得


しなければなりません。

しかも施主と業者が同行して工事説明を行ったあとに取得するとのことでした。

もちろん近隣承諾が工事着工の条件になっているマンションはあります。

しかし、


● 施主と業者が必ず同行して行う


● 近隣承諾書に署名と捺印をもらう


● 例外なく8世帯全てから必ず取得する


この最後の、


例外なく全世帯必ず取得する


これはあまりにも厳しすぎます。

今まで聞いたことがありません。


海外出張に行っていて長期不在だったり、、


居留守を使って絶対に出てこない人がいたり、、


この短期間で会うことが出来ない世帯は絶対あるはずです。


ちなみに本日は7月16日です。


岩柳さんは8月末で現在の賃貸住宅を退去しなくてはなりません。

一方で工事期間は実質で15日間程度はかかります。

近隣承諾書を全て取得して初めて工事申請書を提出できるわけですが、、

それが管理組合を経由して理事長の承認印を取得し工事着工できるまで


およそ2週間はかかると思われます。
(特にこのマンションは厳しいので(^^;))


ということは遅くとも7月25日頃には近隣承諾書を全て取得し、


それら書類を添付した工事申請書を管理組合に提出


しなければ間に合いません。

隣接8世帯の工事承諾書獲得なるか?

私はその旨を再度岩柳さんに伝えて確認したあと、


<私、>
「それでは岩柳さん。
時間がありません。。
早速、今から始めましょう!」


ということで私は岩柳さんと隣接世帯を訪問していきました。

岩柳さんは604号室です。

この日は15:00と中途半端な時間帯ということもあったせいか、、

8世帯まわって取得出来たのは左隣りの603号室だけでした。

私か岩柳さんのどちらかで取得出来ればまだ良いのですが、、


近隣承諾は必ず施主と業者が一緒に行う


というありえないルールのため非常に困難でした。

岩柳さんも仕事をしているため私と時間を合わせて一緒にまわるのはすごく大変でした。

しかし文句を言っても始まりません。

次の日も、、また次の日も、、

岩柳さんと毎日夕方17:00以降に合流して隣接住戸をまわりました。

そして開始から5日経った7月21日の段階で、

704、605、603、505、504

の5世帯まで取得することが出来ました。

残りは504、703、705の3世帯です。

何とかこの3世帯を7月25日までに取得しないと8月末引渡しが厳しくなってきます。


しかしここから進展がありません。。


7月24日になってようやく直下階の504号室を取得しました。


いよいよ残りは703と705です。


だんだん感じがわかってきた私は内心イヤな予感がしていました。

7月16日から回り始めて9日経ったわけですが、、


705号室に関しては全く反応がありません。。


703号室に関しては呼び鈴を押すと、


「今、誰もいないのでわかりません。」


、と、子供のような声で毎回全く同じ返答をしてきました。


小学生くらいの子供なのか?


感情の無いロボットみたいな感じだけど


ちょっと不思議な感じでした。

いずれにしてもこの2世帯に関してはこの先も取得出来そうな気がしませんでした。

最終猶予期間直前での残酷な宣告

そうこうしているうちに、

当初はなんとか頑張っていた岩柳さんでしたが、、

私がタイムリミットとしていた7月25日が近づくにつれて次第に口数が少なくなっていました。


う~ん。。ヤバイ、、


また岩柳さんがちょっと不安定な表情になってる。。


そしてタイムリミットを迎えた7月25日、

遂に703号室に変化がありました。

いつもは子供のような声で


「今、誰もいないのでわかりません。」


の一点張りでしたが、

この日は大人の女性の声で、


<703号室住人>
「ハイっ!ちょっとお待ちください。」


と40歳くらいの女性が出て来ました。


<私、>
「604号室で工事を担当致します業者でございます。
工事するにあたり隣接した住人様方から承諾を頂いておりまして。。」


<703号室住人>
「何度も来てもらっていたようですね。。
本当に申し訳ありません。
私はいつも朝出たら夜は遅くまで帰ってこないので。。
ここって工事するための条件がすごく厳しいでしょ?
新しい理事長に変わってからこうなっちゃったんですよ!
頑固で無駄に正義感の強い一級建築士の年輩の方なんです。
勝手にこんな厳しいルールにしちゃったんです。」


<私、>
「なるほど、、
そういうことだったんですね。
全世帯必ず取得とは本当に厳しいです。。
しかも必ず施主と業者が同行とか、、
今まで聞いたことが無いです。」


ということで残り705号室だけになりました。

そうはいっても毎日毎日。。

長い道のりでしたが。。。

すると703号室の住人がこんなことを言ってきました。


<703号室住人>
「ちなみに705号室の神谷さんですけど、、
先月から出張でロサンジェルスに行ってるみたいですよ。
いつ帰ってくるのか?
今日明日には帰ってこないんじゃないですか?」


<私、>
「えっ、?!、、
ロサンジェルスに出張ですか?!」


それを聞いた岩柳さんの表情が一気に凍り付くのを目の当たりにした私は、、

頭の中が真っ白になりました。




ヤバイっ、、終った。。


それじゃどうしようもね~じゃん。。




次回>>第77話に続きます。

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