こんにちわ。トラジロウです!
前回>>第77話からの続きです。
毎日毎日、、ただひたすら、
岩柳さんとマンションの玄関ホールに張り付き、
705号室の神谷さんを追い続ける日々。
あまりにも毎日居座り続けたせいで、、
その棟の住民の顔をほとんど覚えてしまった私たち。
そんなある日、
今まで見たことのない人が玄関ホールに入ってきました。
705号室の住人ついに現る?!
<私、>
「すみません。。
705号室の神谷さんでしょうか?」
すると、その人はジッと私たちを不思議そうに見つめてきました。
私と岩柳さんは思わず息を止めてその人を凝視しました。
<住民>
「、、いえっ。。
私は4階の住人です。。
7階ではありません。」
私と岩柳さんはガッカリして肩を落としました。
翌日も私は岩柳さんと17:30に合流して張り込みを続けました。
そこに管理人さんがやってきました。
<管理人さん>
「とりあえず工事申請書はこの間の作戦通り管理会社に提出しました!
近隣承諾書は全部そろっているのが条件ですがとりあえずはバレてません。
受理されたとはいえ最後にその頑固ジイさん(理事長)に書類が回ればバレてしまいます。
なのであくまでも時間稼ぎです!」
<私、>
「管理人さん。。本当に有難うございます。
オカゲでわずかな可能性を繋げることが出来ました。」
<管理人さん>
「ああっ、そうだ!
私もいろいろと情報を入手してるのですが。。
705号室の神谷さん、
昨日も夜遅くに出入りしていたようです。」
<私、>
「えっ?!、、本当ですか?
私たちは9時くらいまでは粘ってるのですが。。
じゃあ私たちが帰ったあとってことですよね?」
今日は7月29日です。
当初想定していたタイムリミット25日から4日経過しています。
管理人さんの好意で工事申請書を提出してはいますが。。
しかし実際は書類が全て揃っていないわけです。
私は岩柳さんと話し合いました。
<私、>
「705の神谷さんは昨日の夜、我々が帰ったあとに現れているそうです。
なので今夜は頑張って遅くまで待機しようと思うのですが。。
岩柳さん、、大丈夫でしょうか?」
<岩柳さん>
「ええ、8月末の引越しが出来なければ私たち住むところが無いので。。
とにかく私も頑張ります。
トラジロウさん。。
毎日遅くまで、、本当に申し訳ないです。」
ということで、
この日からはとにかく限界まで待ってみようということになりました。
しかし、、
岩柳さんとは7月16日から実に13日間連続で一緒に頑張ってきました。
毎日17:00から18:00の間に合流して夜9時頃まで。
毎日3時間以上一緒に過ごしてきました。
余談ですが、、
こういった大変泥臭いことが住宅業界ではシバシバ起こりえます。
なので住宅業界は離職率が高いのです。
(特に新築・リフォームの営業職)
契約を交わした以上お客様とは一心同体です。
あらゆる障壁を克服して工期通りに工事を完了させるのが我々請負業者の責務です。
その日は夜11時まで粘りましたが結局705の住人は現れませんでした。
<私、>
「岩柳さん、そろそろ終わりにしましょう。
娘さんも心配されると思いますよ!」
<岩柳さん>
「私、もう少し頑張ってみます。
トラジロウさんには毎日毎日、、
お時間を取らせてしまって申し訳ないです。。
こんなに一生懸命、、
私たちのために、、本当にすみません。。」
<私、>
「本当に大丈夫ですか?
明日も朝早くから仕事でしたよね?
それでも頑張るなら私も一緒に粘ります!」
といった感じでもう夜11時でしたが、、
もう少し粘ってみることにしました。
これまで15日間毎日一緒に過ごしてきました。
その間、岩柳さんはほとんど話しをしてきませんでした。
というか心配過ぎて私と話をする余裕など全く無い様子でした。
しかしこの時ばかりはなぜか私に話しをしてきました。
<岩柳さん>
「実は、、
トラジロウさんに謝らなければいけないことが。。」
<私、>
「えっ?!、、謝るって?
何かありましたっけ?」
<岩柳さん>
「最近、、夜中に何度か電話がかかってきませんでしたか?」
<私、>
「ああ、、今まで4回ほど知らない番号から電話がかかってきましたが。。
それって岩柳さんと何か関係があるんですか?」
真夜中電話の正体とは?
<岩柳さん>
「こめんなさい。。
あれは娘が電話していたんです。。
あの子、、いつの間にかトラジロウさんの電話番号を入手して電話をかけていたんです。」
<私、>
「あれって娘さんだったんですね!?
でも、、何も話さず無言のままで、
最後は切れてしまうのですが。。
何のために娘さんは電話をかけてきたのでしょうか?」
すると岩柳さんは肩を震わせて涙ながらに、
<岩柳さん>
「あの子、、中学校の時のイジメが原因で心を閉ざしてしまって。。
本当は今高校一年生のはずなのですが、、
学校に行ってないんです。
ほとんど話しもしなくなっちゃって。。」
<私、>
「確かに娘さんが話しをしているのを見たことがありませんでしたが。。
そういうことだったんですね。」
<岩柳さん>
「近隣承諾書を取りにいくようになってから、、
もし全部取れなかったらどうなるんだろうって、、
私、、すごく不安で。。
何度か娘に強く当たってしまったんです。
娘は友達とか、、
誰か頼る人なんてもちろんいないですから、、
それで唯一面識があって信頼出来そうなトラジロウさんに電話してしまったようです。」
<私、>
「なるほど。。
岩柳さんの感情が高ぶって娘さんに強く当たってしまった時、
逃げ場のない娘さんが唯一面識がある私の携帯に電話をかけていたんですね?」
<岩柳さん>
「本当に、、トラジロウさん、
ごめんなさい。。
ごめんなさい。。ごめんなさい。。」
岩柳さんはその場で崩れるようにして泣き出してしまいました。
ホントに情緒不安定な人だよなあ。。
こんな母親といつも一緒なんて娘さんマジでかわいそう。。
私はやさしく岩柳さんに話しかけました。
<私、>
「私は幼い時に父を亡くしました。
なのでいつも母と二人でした。
母は気丈な人でしたが年に数回ほど幼い私に対し強烈に激高することがありました。
子供は親の元以外どこにも逃げ場がありません。
なのでその時ばかりは母のことが本当に恐怖で脅威でした。
娘さんにとって唯一の頼りは母親の岩柳さんしかいません!
当初、岩柳さんは私に対しても
「殺す!」
といった一般社会では許されないような暴言を発してしまいましたが。。
幼い娘さんがそんな驚異の言葉で母親から罵倒され続けたらどうでしょうか?」
岩柳さんは神妙な面持ちで私の話しを聞いていました。
娘さんが思わず私に電話をしてしまったのは本当に怖くて仕方なかったんだと思います
電話口で何となく騒々しかった印象を受けましたが、、
それは岩柳さんが娘を怒鳴りつけている声が何となく電話口から伝わってきたためだとわかりました。
他人の家庭に首を突っ込むつもりはありませんでしたが、
私は岩柳さんに今後、
なるべく怒らないよう常に心掛けること。
「殺す!」のような危険な暴言だけは絶対に言わないこと。
の二つを約束してもらいました。
そうこうしていると、、
突然、郵便ポストのエリアで人の気配を感じました。
あまりにも岩柳さんとの会話に熱が入ってしまったせいで、
玄関ホールを通過した住人のことに気付かなかったのです。
我に返った私と岩柳さんは郵便ポストエリアの方に駆けよっていきました。
その住人はポストを開けて中の郵便物に目を通していました。
その開かれた郵便ポストの扉の表面には
705号室
と表示されていました。
やったっ!ついに705号室の神谷さんに会えた!
次回>>第79話に続きます。
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