こんにちわ。トラジロウです!
前回>>第80話からの続きです。
近隣承諾書が全部そろっていないにもかかわらず、
先行して工事申請書を提出していたことが理事長にバレました。
理事長は激怒し、その書類一式を突き返されてしまいました。
しかし何とか受理してもらわなければと、
私と岩柳さんと管理人さんの3人で理事長宅へ行きました。
しかし怒った理事長は私にずっと説教をし続けました。
すると突然岩柳さんが豹変し、
狂ったように理事長に強烈な怒号を浴びせました。
豹変した岩柳さんと頑固理事長
<岩柳さん>
「テメーッ!
ふざけんじゃね~んだよ!
絶対許さないよアンタ!
アンタのせいで、、
アンタのせいで、、
どんだけ苦労したと思ってんだよ!」
そのあまりにも強烈な怒号と恐ろしさに、
私も理事長も管理人さんも、、
まばたき一つ出来ずにカタマッてしまいました。
マジで恐ろしい。。怖すぎる。。
あまりの迫力に成すすべもなくただ呆然とする理事長。
しばらくして、、
完全に屈服モードになった理事長の顔色は驚くほど真っ白に変っていました。
さすがの頑固理事長も相当驚いたんでしょう。。
<理事長>
「いやっ、、
、わかったよ。。
もう、、わかりましたから。。
落ち着いてください。。
工事申請書は受け取ります。。」
私はハッと我に返って二人の間に割って入りました。
そして、、
<私、>
「岩柳さん!
ちょっと落ち着いて!」
と言って岩柳さんを理事長から引き離しました。
続けて理事長に、
<私、>
「理事長、有難うございます。
それでは書類一式は受け取ってもらえますね?
我々はもう時間がありません!
とにかく早く承認をしてください!」
私はそう言いながらいろいろなことを考えていました。
もし理事長が意固地になって、
「こんな暴言は許されん!絶対に承認しない!」
などと完全にコジレテしまうのではないか?
いずれにしても岩柳さんのあのキレ方は尋常じゃありません。
それゆえに脅迫罪で訴えられでもしたら事態は泥沼化してしまいます。
そうなったらもうリフォームどころではありません。
私は注意深く理事長の顔色を伺っていました。
しかし理事長は何かウラがある感じでもなく、、
<理事長>
「まあ、、わかりました。。
とにかく全部そろったわけだし、、
引越しが出来なかったら大変だ!
管理組合にこの書類を回して再び私のところに来たらすぐに承認します!」
今まであんな最悪な頑固ジジイだったにもかかわらず、、
一変してイイ人になっていました。
さらに岩柳さんにも話しかけました。
<理事長>
「いやあ、、すみませんでした。
私も嫌がらせをしているわけじゃないんです。。
理事長として規約通りにしっかり管理しなければと思って。。
でも、、全部揃えるのってやっぱり大変なんですかね?」
と、こちらの顔色を伺うように言ってきました。
岩柳さんはまだ怒りの表情のまま、、
理事長を睨みながら無言で立ち尽くしていました。
なので代わりに私が、
<私、>
「理事長!
近隣承諾書取得の件ですが、、
不在のお宅に関しては最低3回訪問します。
そして訪問した日時を近隣承諾書の備考欄に記載します。
その不在宅には工事通知書をポストに入れて終わりです。
一般的にはそんな感じで対処するケースが多いです。」
理事長は悪びれる様子もなく私の話を聞いていました。
<理事長>
「そうなんですか。。
私も理事長になったんでこのマンションのためにって思ったんですが。。
ちょっとやり過ぎたのかもしれません。。」
工事着工まであと4日!承認なるか?!
ということで、、
それから三日が経過しました。
承認されたら管理人が連絡をくれることになっていました。
工事着工予定日は8月8日です。
今日は既に8月4日。
私はメチャクチャ胃が痛い状態でした。
なぜなら大工、設備、電気、内装など、、
全ての関連業者にこの事情を伝えていなかったからです。
もしこの状況を伝えたら業者さんたちは、
もし延期になったら困るのでお断りします
といって逃げられてしまいます。
しかし工事着工予定日の8月8日までに承認が下りなければ業者さんは仕事ができません。
業者さんたちはメチャクチャ怒るでしょうし、、
その空振り分をキッチリ請求してくるでしょう。
そうなったら赤字になるし会社からもツメられます。
住宅業界の営業マンは顧客から大きな信頼を得て契約にこぎつけます。
しかし実際は携わる人が多く(社内スタッフ、職人など)
顧客との付合い期間も長いわけです。
まあ、、ここでグチをいっても始まりませんが。。
そんな中、管理人さんから電話がかかってきました。
すぐに私は電話に出ました。
<私、>
「お世話になります!
管理人さんですね?」
<管理人>
「ああっ!トラジロウさん!
おめでとうございます!
たった今、承認がおりましたよ!」
その言葉を聞いてホッとした私は思わずその場に座り込んでしまいました。
もしあの時、
理事長が逆切れして承認が下りなかったらと思うと、、
今思い出しても背筋がゾッとします。
引渡し完了!最後に聞いた娘の声
そして月日は流れて8月29日、
何とか無事に岩柳邸のリフォーム工事は完了しました。
8月8日に予定通り工事が開始してからは、
特に問題無くスムーズに進行しました。
私は最期に引渡し前チェックを行っていました。
どうなるかと思ったけど何とか完成まで持っていけたなあ。
本日18:00からいよいよ引渡しです。
私は岩柳さんが来るのを待っていました。
余談ですが、、
管理人さんから聞いたところによると、
あの頑固理事長は中身が入れ替わったように驚くほどイイ人になったとのことでした。
あまりにも頑固で傍若無人なジイサンでしたが、
それゆえに誰も歯向かう人がいませんでした。
なのでどんどん理事長は悪い方向にエスカレートしていきました。
そして管理規約をメチャクチャ厳しいものに変えてしまいました。
でも今回、岩柳さんから強烈な怒号を浴びせられていい意味で目が覚めたようでした。
今回の岩柳さんの振る舞いは
「まともなオトナ」
という観点からは決して賛同は出来ませんが、、
一方で人間はヨワイ生き物でもあるわけで、、
なので今回のように
間違ったことに対してメチャクチャ怒られる
ことも時には必要なのかもしれません。
しばらくして岩柳さんが現れました。
久しぶりに娘さんも一緒に来ました。
<岩柳さん>
「いろいろと本当にありがとうございました。
これで私たち、、
引越しすることが出来ます。
本当に、、本当に有難うございます。」
<私、>
「まあ、、紆余曲折ありましたけど。。
終わりよければってところだと思います。」
その後、しばらく岩柳さんと話しをしていました。
相変わらず終始無言の娘さんは黙ったまま、、
でも以前のように、
何か思いつめたような、、
私に何かを訴えかけてくるような、、
そういう切迫した印象は受けませんでした。
岩柳さんの機嫌が良いからかもしれません。
その後、リフォーム工事完了報告書にサインをしてもらいました。
私は最後に別れの挨拶をして玄関の方に歩いていきました。
そして玄関ドアの取っ手を握ってドアを開けようとした瞬間、
終始無言で母親の後ろにいた娘さんが突然私の前に飛び出して来ました。
想定外の娘さんの行動に私はちょっと困惑しました。
岩柳さんもその行動に少し驚いた様子でした。
前に立った娘さんはジッと私の目を見つめて
<娘さん>
「アリガトウゴザイマシタ!」
と言ってペコッと頭を下げた後、
奥のリビングの方に走っていなくなってしまいました。
娘さんがしゃべった?!
カワイイ声してんだなあ。
なぜだかその時の私は少しだけ胸が熱くなりました。
そして走り去っていった娘さんに心の中で、
お母さんと仲良くやっていきなよ!
とつぶやきました。
この不思議な母子のことは今でも鮮明に私の記憶に刻まれています。
もちろん深い話しは一切していないので、、
岩柳さんが離婚なのか死別なのか?
娘さんは具体的に何かの病気と診断されているのか?
など、、
細かいことは一切わかりませんが。。
今はこの娘さんも30歳くらいになっているでしょう。
住宅業界の営業マンを長くやっているといろいろな経験をします。
もし今回のようなお客様と遭遇したらあなたはどう対応しますか?
次回は新シリーズ>>第82話に続きます。
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