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こんにちわ。トラジロウです!

前回>>第107話からの続きです。

今後は現場監督を各営業所に配置すると通達がありました。

これまでは営業が兼任して現場を見ていました。

新築同様リフォームでも現場監督がいる会社はあります。

しかし問題は現場監督に営業の歩合から30%が搾取されてしまうことです。




翌朝の朝礼で語られたこと

翌日の朝、

新人の現場監督が初出社ということで営業所員全員が揃いました。

そして渦中の新人現場監督を待ち構えていました。

しかし新人の現場監督らしき人は見受けられません。

通常、新人は早めに出社しているものですが。。

今まで中規模以上のリフォーム工事であっても営業が一人で現場管理をしてきました。

これからは現場監督が我々の現場に介入してきます。

優秀な現場監督であればいいのですが、、

もしダメな現場監督だった場合は目もあてられません。

だって営業の命である歩合給から30%も取られるわけです。

それに見合う仕事ができる監督でなければ死活問題です。


長井所長が前に立って話し始めました。


<長井所長>
「それでは朝礼を始めます。
本日は新人が初出社してきます。
昨日の営業所会議でトラジロウから話しを聞いたと思うが、
これから一定規模以上のリフォーム工事の場合は現場監督が入ることになった。」


営業所員は少々納得のいかない表情で長井所長を見つめていました。


<長井所長>
「まあ、いろいろ意見はあると思うが、、
しかし我が社も世間で認知されてそれなりの地位を築いてきた。
なので大型現場を今までのように営業が一人で見ているようではダメだ!
お客様のためにも複数人で対応するべきだということになった。」




すると上田営業マンが突然声をあげました。




<上田営業マン>
「しかし長井所長!
現場監督が入るのは別にいいですが、、
営業の歩合から30%も取られるのはオカシイです!
それなら自分は今まで通り一人で現場を見ます。」


さすが上田営業マンです。

彼は言うべきことはキッチリと主張するタイプです。

ある意味異端児的な存在です。

なので私同様、今回の件にはすごく納得がいかない様子でした。

しかし長井所長は、


<長井所長>
「オイッ!、上田っ!
オマエも少しはオトナになれっ!
歩合をちょっとばかり取られたからどうだって言うんだ!
お客様の立場で考えてみろ!
もしオマエが事故にあったらどうだ?
現場が火を噴いてしまうだろ!
でも現場監督がいればそういった不測の事態にも対応できる!」


<上田営業マン>
「何を言ってるんですか!?
それは全く別の話しじゃないですか?
とにかくオレは納得いきませんよ!」


と言って長井所長を睨みつけました。

しかし長井所長はそんな上田氏を横目に、


<長井所長>
「今日から出社の新しい現場監督だが、、
朝方連絡があった。
少し体調が悪いみたいでちょっと遅れるようだ。
もうそろそろ来るだろう。」


私は呆気に取られました。


えっ?!、、初日から遅刻っ?!


体調不良って、、ホント大丈夫なのか?

渦中の新人現場監督現る!

すかさず上田営業マンが、


<上田営業マン>
「はあっ?!、、
どういうことですか?
新人のクセに初日から遅刻ですか?
我々には厳しいクセに新人現場監督にはヤケに寛大ですね?」


上田氏は私よりも若く当時26才でしたが、、

既婚者で2人の子供がいました。

私も少々異端児?的なところがあり彼とは気が合いました。

以前彼は私に、


もし理不尽なコトがあればいつでも会社を辞めます!


と言っていました。

今回の現場監督に歩合を取られてしまう件に関しては相当怒っていました。


もちろん私もそうですが。。


しかしこういったケースでは、


誰かが先に声を上げると他の人は抑える


側にまわる傾向があるのかもしれません。

上田氏が先に声を上げたため、

私はこの事に意見するのは止めました。

そして長井所長の反応を見守っていました。

長井所長は私と上田氏に関して、


もし理不尽なことがあれば会社を辞める


覚悟があることを恐れてか以外に最近は反発してきませんでした。

長井所長も所詮はサラリーマンです。


結局、会社員なんてそんなものです。。


弱いモノいじめは出来ても、、


文句を言わない人には強く言えても、、


正義感が強く反骨心のある者には強く言えなかったりします。


少し話がそれましたが。。


その後、少し落ち着いてきたところで、

突然、営業所の入り口のドアが開きました。


「オハヨウゴザイマス。」


活舌が悪く弱々しい声色でそう言いながら、

一人の老人が入ってきました。

私たちは一斉にその人物に目をやりました。

そこには、、


年老いたブカブカのスーツを着た人が立っていました。


それを見て全員が言葉を失いました。


なっ?!、、なんなんだっ?


誰だこのジイサン、、まさか。。


すると長井所長が、


<長井所長>
「おはようございます!吉川さん。
今ちょうど朝礼をやってます。
前に立ってみんなに自己紹介をお願いできますか?」


そういってその老人の肩を軽くたたきました。


オイオイ、マジかよ?!


この人が現場監督?


そして皆の前に立ったブカブカのスーツを着た老人は、


<新人の老人>
「ヨッ、、ヨシカワデフ。。
ゲンバカントクトシテニュウシャシマシタ。
ヨロシクオネガイシマフ。」


私は目の前が真っ暗になりました。

どう考えてもこの人に私の現場を任せる気にはなりません。

というかこの人を現場に介入させたら絶対にヤバイです。


何て言ってるかわかんないけど。。


かなり深刻な持病とかありそうだけど。。


呆然と立ち尽くす私に長井所長が、


<長井所長>
「ああ、そうだ!トラジロウ!
現場監督の吉川さんにはオマエの浜口邸に入ってもらう!
あそこは営業所から近いし金額も1300万円と大きい現場だ!
いろいろ教えてやってくれ!
まあ、吉川さんは100戦錬磨のベテランだから安心だな!」


この時ばかりは本気で長井所長に殺意を抱きました。


よくそんなコトが言えるな!


冗談じゃね~ぞ。唯一の歩合がぶっ飛んじまう。。


その浜口邸という現場は請負金額1300万の大型現場です。

ものすごく難しい案件のため工事着工まで半年かかりました。

今まで私一人でサンザン苦労してようやく着工にコギツケタお客様です。


ここ数カ月、、


私は部下の世話や営業所の仕事で手一杯でした。


なのでこの浜口邸はまとまった歩合給を獲得できる唯一の物件です。

それなのに、、


そこから30%もこの老人に取られてしまうのです。


それどころかこの老人が介入することで現場が混乱してしまい、、

クレームや、現場、近隣、職人とのトラブルなど、、

歩合給が無くなってしまう可能性もあります。
(規定利益率を下回ると歩合は無くなるルールです)

私は恐怖と不安で居ても立っても居られない状況でした。


頭の中で「転職」の二文字がよぎりました。


今後どうなってしまうのか。。


次回>>第109話に続きます。

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