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こんにちわ。トラジロウです!

意を決して大手ハウスメーカーを退職しこのベンチャー企業へ転職して6ケ月半。

私はあと1カ月と半月でノルマを達成出来なければ退職する意向を固めていました。

しかし担当エリアを未だに持たせてもらえない私はある程度の金額が見込める有望案件を手にすることが出来ません。

そんな中、上田営業マンがパワハラ長井所長の目の前で再度私に自分のエリアの有望案件を譲ると言ってきました。

前回の時はパワハラ長井所長に

「自分のエリアの好案件をトラジロウに譲るんならオマエのエリアを剥奪するぞ!」

と激しく脅されてその件は流れてしまいましたが。。




反旗を翻した孤高の営業マン

パワハラ長井所長と上田営業マンは見つめ合ったまま一歩も引かずにしばし時間が流れました。

この日の上田営業マンの強烈な眼差しは長井所長をも圧倒していました。





あまりの張り詰めた空気に私も一歩も動けず食い入るように二人を見つめていました。

するとパワハラ長井所長が、、


<長井所長>
「オイッ!この前も言っただろ!
テメエ今月の自分の数字だってまだ見えてねえのにこんなヤツに好案件を譲ろうなんてナメテんじゃね~ぞ!
テメエみたいな中卒のどうしようもないヤツにいろいろ教えてやってここまでしてやった恩を忘れたのか?」


ブチ切れた長井所長はものすごい圧力で怒号を浴びせかけました。


しかし一歩も引かない上田営業マンは静かな口調で話し始めました。


<上田営業マン>
「ここ半年以上営業所の成績が悪いからと言って所員に当たり散らすのはもう止めてくれませんか?
特にトラジロウさんに関しては明かに理不尽です。
ハッキリ言って見ていて不愉快です!
営業所のみんなもそう思っているはずです。
トラさんは入社してからずっとみんなが嫌がるゴミ案件をイヤな顔一つせずに淡々とこなしてきました。
本来ならすぐにエリアを持って高額案件を扱える実力や経験があるにもかかわらずです。
こんな理不尽な状態のままでは本来の実力が発揮できず新人猶予期間が終ってしまいます。
そして給料が8万円になったらトラさんは辞めてしまうでしょう。
私はトラさんに辞めてほしくないから好案件を譲ろうとしてるんです!
それを阻止すると言うなら私は長井所長の下でこれ以上やっていく自信も気力もありません。」

パワハラ所長の決断

その時営業所内に居た全所員が二人の対立に耳をそばだてていました。


上田営業マンは強い眼差しで一歩も引かずに長井所長を見つめていました。


しばらくすると長井所長が、


<長井所長>
「オイッ!上田ッ!オマエもずいぶん成長したなっ。。。
最初ウチに転職してきた時はアイサツもろくに出来ね~どうしようもないヤツだったけどな。。
他人の事なんか全く興味ね~し、むしろ他人の物を取り上げても自分の成果にしたがるような強引なヤツだったが。。
、、でもそんなオマエが協力してやろうと思ったってことはトラジロウは見込みがあるってことだよな?」


<上田営業マン>
「別に私だけではありません。
他の所員たちも最近ではみんな言ってます。
今まではどうせすぐ辞めるだろうってことで新人は使いッパシリにしてゴミ案件をやらせるのがセオリー、、
みたいになってましたが。。
でも、、トラさんの日ごろの言動を見ているうちに何となく応援したい、、一緒にやっていきたい、って思ったんです。
明確な理由はよくわかりませんが。。」


<長井所長>
「、、わかったよ。。
オマエがそこまでオレに歯向かってくるとはよっぽど思いが強いんだろ!
よし分かった!
じゃあオマエの優良案件をトラジロウにやらせてみろ!」


<上田営業マン>
「ありがとうございます。
それでは早速トラさんと打合せをして訪問する日程などを調整してみます!」


<長井所長>
「ただし、オレに反抗してまでトラジロウに譲るんだから結果契約になりません、、じゃあスマサレね~から覚悟して臨んでこいよ!
オレはそんなに甘くね~からな!」


低くドスの効いた声で最後にそう言い放たれた瞬間、、


私も上田営業マンもその凄まじい圧力に思わず後ずさりしてしまいました。。


こんな嫌なプレッシャーかけられるんなら案件貰わない方がよかったんじゃね~の。。

起死回生の好案件から一転!大逆転なるか?

そして約一週間後にそのお客様宅へ上田営業マンと訪問することになりました。

この案件は上田営業マンの過去に工事をしたお客様(OB顧客とかリピーターとか言います)です。

なので上田営業マンに対して信頼を置いているはずです。

上田営業マンいわく相見積もり(他のリフォーム会社に見積り依頼すること)もしていないだろうとのことでした。

そのお客様のお宅へは一台の車で向かったので車中でいろいろと上田営業マンと話をしました。


<私、>
「上田さん、、ご自分の大切なOB顧客を私に譲ってくれて本当にありがとうございます。
しかも長井所長にあれだけ言われていたにもかかわらず。。
しかも今回は水周り(キッチン、お風呂等)の交換工事で200万円くらい見込めそうな好案件ですよね?
本当にいいんでしょうか?」


<上田営業マン>
「大丈夫です。私も当初はゴミ案件を一杯トラさんにやってもらったオカゲで身が軽かったので結構契約が取れました。
こちらこそありがとうございます。
しかもトラさんは建築のことは本当に詳しいし説明の仕方、話し方、、すべて僕的には勉強させてもらってます。
でもあと一カ月ちょっとで月間契約金額合計300万円いかなかったら辞めてしまうと思うので何とか応援したいんです。」


<私、>
「ありがとうございます。
今回もし200万円くらいで契約が出来れば、私も小さい案件はいくつかあるので合計で250万円くらいまでもっていけます。
なので少し希望が見えて来ました。
上田さんのオカゲです。本当にありがとうございます。」


<上田営業マン>
「いえいえ、、それはトラさんの実力だと思います。
私も含めてトラさんを応援したくなってしまうのはヤハリ普段からの言動などを含めたトラさんの全ての人に対する営業力であり処世術だと思います。
実直かつヒタムキに行動をしてきた結果、私たちの心を動かしたんだと思います。
長井所長だって結局今回の要求を飲んだじゃないですか!
あれは私の説得だけではありません。。
やはり長井所長もこのままトラジロウさんを辞めさせたくないと思ったんだと思います。」


そうこうしているうちにお客様の家の前に到着しました。

車を近くのコインパーキングに止めて上田営業マンと玄関のインターフォンを押しました。

このお客様はほぼ契約が確定している、、しかも200万円前後の超有望案件です。

最近常に嫌な緊張感しか無かった私は少しの安堵感を抱きながら上田営業マンのすぐ後ろで待機していました。

しばらくして玄関のドアが開いてご主人が出て来ました。


<上田営業マン>
「小橋さま(仮名)お久しぶりです。新光クリエイトの上田です。
本日は私と建築士のトラジロウと二人でまずは現地を見させて頂きます。
よろしくお願いします。」


、、と、その時、、

上田営業マンと私はその小橋様の姿を見てギョッとしました。。


頬はコケ、やせ細っていて明らかに尋常ではない感じでした。


何か重い病気を患っているとしか思えない、、

やせ細り過ぎていてよく立っていられるなと思えるほどの痛々しさです。。


これってもしかして末期ガンとか患ってるんじゃ。。


、リフォームの契約とかして大丈夫なんだろうか?。。


次回>>第20話に続きます。

※ベンチャー企業奮闘記は毎週日曜日更新です。




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