こんにちわ。トラジロウです!
前回>>第98話からの続きです。
私は黒沢夫妻の表情や話し方を冷静に見つめながら、
どう対処するのがベストかいろいろ考えていました。
何とか解約だけは避けなければなりません。
この会社に転職してから数多くの困難を乗りこえてきました。
しかし今回も減給と降格まであと一歩の大ピンチです。
顧客の思惑を読み取る傾聴力
こういったケースに陥ると、
説得モードに入ってしまう営業マンは多いです。
しかしそれは全くの逆効果です。
自分が話したい気持ちはグッと押さえて、
とにかく親身になってジックリと話しを聞きます。
そして顧客の不安や思いを全て吐き出させることが重要です。
私は黒沢様の言う事を否定せずに親身に受け入れ、
共感と傾聴で場の雰囲気を和らげていきました。
最終段階で私が発した、
「私にとって黒沢様は部下の大切なお客様であることに変わりありません」
の一言でかなり距離が縮まったように感じました。
それまでの流れから推察すると黒沢様は
柳沼主任の掲示価格が売価ではなく原価に近い金額
だと考えているのではないかと思われました。
当時は社内規定により粗利率が30%に設定されていました。
すなわち原価が450万円であれば売価は
450 ÷ 0.7 = 642万円
になるわけです。(粗利率30%価格)
しかし柳沼主任が直で工事を請けることで、
原価450万 ÷ 0.9 = 500万円
というように
粗利率10%程度の特別価格
で柳沼主任が工事を請けてくれたと思っているということです。
私は黒沢様に、
<私、>
「カケヒキ無しで申し上げますと、
弊社は利益率30%で価格設定をしています。
しかし柳沼は自分で工事を請けることで利益率10%程度で契約したと思われます。」
すると、、
<黒沢ご主人>
「、、真山さん。。
さすがです、、柳沼さんはあの時、
自分で工事を請ければ利益は特別に10%だけでいい
って言ってくれてました。」
<私、>
「そうでしょうね。
おそらくそういったやり方で柳沼は自分で工事を請けていたんだと思います。」
<黒沢ご主人>
「本当にお恥ずかしいです。。
我が家は雨漏りをはじめアチコチ傷んでいまして、、
全面的にリフォームをせざるを得ない状況だったんです。
もちろん後ろめたい気持ちは正直ありました。。
でも、、柳沼さんが本当にイイ人だったんで。。」
<私、>
「いえっ、、黒沢様には何の問題もありません。
私だって黒沢様の立場だったらその話に乗ってしまうと思います。
柳沼って、、ホントにそういうトコロありますしね!
悪いコトをした部下をホメるわけにはいきませんが。。」
ふと、その時、、
ずっと下を向いて黙り込んでいた奥様が少しだけ微笑みました。
起死回生のクロージングトーク
だいぶ形勢が良い方向に傾いてきたように感じました。
しかし油断は禁物です。
そもそも今日は解約を確定するために黒沢邸に来ています。
しかし本当は絶対に解約を避けたいわけですが。。
私は黒沢邸に到着した時から、
この500万円という金額は本当に利益率10%しかとれていないのだろうか?
と、頭の中でずっと考えていました。
本当に柳沼さんはそんな低粗利で工事を請けるだろうか?
私はすこし疑問を持っていました。
前回の98話で、私は黒沢様に
「今回は特別に柳沼価格の500万円のままでいきます!」
と言いました。その理由は、
今回の500万円が見積り内容から考えて意外に妥当な金額に思えたからでした。
ようするに柳沼主任は、
「利益は10%だけで特別にやります!」
と黒沢様に言ってはいるものの、
実際には利益率をキッチリ確保しているのではと思ったからです。
仮にこのまま解約を免れたとしても、
最終的に利益率が10%で黒沢邸の工事が完了した場合、
利益率大幅ダウンによるペナルティー
を私は会社から受けることになります。
ここが住宅系営業マンのツライところなわけです。
具体的に言うと、
減給や接客禁止、役職降格
などの仕打ちを受けるということです。
なので、黒沢様の話しをジックリと傾聴はしていたものの、
頭の中では、
この500万円という金額が適正粗利を確保しているのか?
についてあれこれ考えていました。
最終的に私はこの500万円という金額が、
会社規定の利益率30%は無理でも25%位確保
出来ていると判断しました。
柳沼主任だって自分で工事を請ければ大変な労力です。
少しでも利益率を高く受注したいのは当然です。
このお客様は柳沼主任のことを相当気に入っています。
おそらく最終的には柳沼主任だけが見積りを出していたと思われます。
いわゆる競合無しの状態です。
なので彼は利益率を高めに積算したんだと思います。
金額が500万円のままであれば解約を回避できる可能性は高いです。
私は改めて黒沢様に言いました。
<私、>
「黒沢様!
いかがでしょうか?
今回の工事は解約をせずに私に全てお任せいただけないでしょうか?
柳沼が個人で請けるのと違って会社としての保証がシッカリ出来ます!
そして責任者の私が直接担当になり現場も見ます!」
この時ばかりは、さすがに私の
クロージングトーク
が決まったかに思われました。
しかし以外にも、
「それじゃあ、このままお任せします!」
ということにはなりませんでした。
なぜなんだろう?!
これまでの流れだと確実に大丈夫だと思ったけど。。
しばらくの間、沈黙が続いたあと、
<黒沢ご主人>
「真山さん、本当にすみません。。
実は、、一つだけお伝えし忘れたことが。。」
えっ?!、なんだってっ?!
やっぱり解約とか言うのだけはヤメてくれよ。。
次回>>第100話に続きます。
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